iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に読書録。読み終えた本がこのまま砂のように忘却の彼方に忘れ去られるのが申し訳ないので、書き留める。要は忘れっぽい読者の読書日記。

前半で投げ出さなくてよかった「禍家」

三津田信三の「禍家」を読んだ。

 

禍家 (角川ホラー文庫)

禍家 (角川ホラー文庫)

 

 

怪異が蠢く呪われた家で少年を襲う惨劇とは!?身の毛もよだつ最恐ホラー!

12歳の少年・棟像貢太郎は、東京郊外に越してきた。しかし、初めて住むはずのその家に既視感を覚えると、怪異が次々と彼を襲い始める。やがて貢太郎が探り出した、家に隠された驚愕の真実とは!?

 

最恐とか書いてありますけど、ほんとはそっこまで怖くない。

正直前半は、ちょっと退屈で何度か本を投げ出した。

あまりにも聞いたことある実話系怪談っぽいというか、夢を忘れて四半世紀のオバがこんなもんで怖がるかい!という、ただのホラーなのですわ。

 

しかし後半それこそ残りページが2ミリ(厚さかよ!)くらいになってからがぜん「面白く」なってくる。

やっぱり、一番怖いのは市井に暮らす普通の人を装った狂人であるなぁ。

 

これ以上言うとネタバレになってしまうので言えない。(つまりミステリとして読むのであればだが)

しかし、最終的には怪異は収束し、めでたしめでたしで終わるのだ。

最後に出てくる司ちゃんは、作者の過剰サービスというか。いい意味での嫌がらせで

めでたしめでたしで終わらせないぞ、という気概を感じた。

 

もうちょこっとだけ言わせていただければ、両親を亡くした主人公の少年貢太郎が、祖母とともに越してきた家で怪異が起こるのだが、祖母に気をつかって、まったく怖いとか言わないの。それも遠慮しすぎでどうかと思うが、

祖母よ!選択肢としてそれはないでしょ~~~?

だって、自分の息子家族が殺された家に唯一の生き残りの貢太郎を連れて引っ越してくるとか。ほとんど描写のない祖母だけどホントならここにも一種の恐さを感じる。

 

実際にもはもう少し複雑です。ぜひ読んでご確認を。

 

しかしこの本には、私が三津田信三に期待している民俗学的な要素とかが少なかった。

解説には三津田信三らしさとも言える「ペダンティック」的な部分が少なく、とあった。

なるほど~さすが、解説任される人はいいこと言うや。

 

いや、ペダンティックって言葉はググりましたけど。

 

ペダンティックとは・・・学問や教養をひけらかすさま。物知りぶったさま。衒学(げんがく)的。(コトバンクより)

 

悪口?になってそうだけど、確かにそういう感じ。

いや、悪口になってるけど言葉を選ばずいうのであれば、読みやすくって児童小説っぽいというか。いや、後半が子供には読ませたくないな。

 

で、せっかくペダンティックについて調べたので、「ペダンティック小説」をご紹介。

 

黒死館殺人事件

黒死館殺人事件

 

 

 

ドグラ・マグラ(上) (角川文庫)

ドグラ・マグラ(上) (角川文庫)

 

 

 

新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫)

新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫)

  • 作者:中井 英夫
  • 発売日: 2004/04/15
  • メディア: 文庫
 

 

ですって。ってかこれ、日本三大奇書ですやん!
そういえば、去年はドグラマグラを何とか読破したので、今年の目標は黒死館殺人事件にしよう。あと2か月で読めるのだろうか・・・

さっきからPCが国士館(健全な方)ばかり出してくるので、私のPCにもペダンティックな方の黒死舘がちゃんと出るように教え込まねばならぬ。

 

ichieda.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たとえて言うなら「絶妙+」和山やまのマンガ

立て続けに2冊、和山やまのマンガを読んだ。

本屋さんとかで少し前から気になっていた作品だ。

 

夢中さ、きみに。 (ビームコミックス)

夢中さ、きみに。 (ビームコミックス)

 

気になる君はうしろの席に――。
WEBなどで噂の作品たちが待望のコミックス化。
話題の作品「うしろの二階堂」は全ページ加筆修正のうえ、30ページ以上の描き下ろし続編を収録。

おいてる場所がBLコーナーだった?ために、とっても誤解していたよ。

ちょっと気になる男の子の絵だな(でもBLなんだろうな)と。

 

いや、このご時世でもあるし私もBL完全否定はではないのだが、アラフィフになってデビューしたくないというか。新たな扉を開いてしまうことへ、変化への恐れと受け取ってもらって構わない(要するに差別してるわけじゃないの!と言いたい)

 

で、娘(1号)の本棚にあったのを見つけさっそくこっそり読む。

 

ちなみにうちの娘(1号)によると、「私の本棚にあるやつは読んでも割と大丈夫だけど、2号の部屋のは、やばい。ガチ」らしい。(お母さん恐いよ!隠して!!!)

 

さて、このマンガなんというか「絶妙」だった。

ものすごくざっくりいうと、男の子同士の友情なんだけども、

同性間の淡い恋とかではなくて、 もちろん少年ジャンプ的な「一回神社の裏でタイマン張って育てる熱き友情」とかでもなくて(いつの時代だ)

なんというか、令和の時代の空気感がとてもよく表されていると思った。

 

いま盛んにLGBTについて認知が進んでいるけれど、

性別の前に人間同士の関係があって、それはもう各々のペアの数だけバラエティがあるのだと改めて気づかせされてくれるというか。

 

前半は男子校の林君を軸にし登場人物が潤に代わっていく連作、後半は二階堂君と目高くんの話。

 

いや、よかったわ。面白かった。
単純に「この人が気になる」でも好きとかではないなんだろうという、ほわほわっとした部分を救い上げるのが上手。

 

 

そして、最近発売されたこちらも娘の本棚にあった。

 

カラオケ行こ! (ビームコミックス)

カラオケ行こ! (ビームコミックス)

 

合唱部部長の聡実はヤクザの狂児にからまれて歌のレッスンを頼まれる。
彼は、絶対に歌がうまくなりたい狂児に毎週拉致されて嫌々ながら
歌唱指導を行うが、やがてふたりの間には奇妙な友情が芽生えてきて……?
話題の作品が描き下ろしを加えて待望のコミックス化!! 

 

こちらも、一筋縄ではいかない関係性!やくざと中学生男子の友情?にちょっぴりそれ以上の関係。

ま、全体としてはギャグマンガなのだけど。

突然現れたヤクザの狂児は、組長主催のカラオケ大会で最下位になりたくない(なぜなら組長に趣味の素人刺青を入れられてしまうから)がゆえに、中学生の合唱コンクールでが勝負部長の聡実に指導を乞う。

 

もう設定自体が面白いのだけど、聡実のビビりつつもはっきり物を言うところとか、狂児の人当たりの後ろに見え隠れするアウトサイドな一面とかがよすぎて、ちょっと言葉にできないので、他人様のレビューを読みまくってしまった。

(読みまくって、「ブロマンス」という言葉も学んだ)

 

いや、もう皆さん全くそうだ!説明の難しい魅力が詰まっていると思う。

そして、図らずもキュンキュンしてしまうというか、なんというか。

 

きっと、すごくニッチなとこを救い上げているのだけど、もっていき方がうますぎて

割と範疇外のアラフィフ(私だ)の胸にまで響いちゃっている感じ。

 

とはいえ、絵はまだ粗削りというか独特というか(一部、佐々木倫子の絵柄に似てると思ったんだけど。動物のお医者さん)。これから伸びる漫画家さんだと思う。

面白いマンガになかなか巡り合えないなーと思っている方におすすめ。

 

懐かしの動物のお医者さん。(わが家は今さら息子がはまり中)

 

 

動物のお医者さん 1 (花とゆめコミックス)
 

 

 

 

 

個人的京極夏彦フェア「今昔百鬼拾遺 月」を読んだ

先月は個人的京極夏彦フェアであった。

そもそも去年夏くらいから「別々の出版社から、毎月一冊 今昔百鬼拾遺シリーズを刊行」していた京極夏彦

 

うわー、こりゃすごいね、と遠巻きに見ていたのだがメルカリにて三冊セットでお安く出品されているのを発見して思わずポチリ。

 

 

 

今昔百鬼拾遺 天狗 (新潮文庫)

今昔百鬼拾遺 天狗 (新潮文庫)

  • 作者:京極 夏彦
  • 発売日: 2019/06/26
  • メディア: 文庫
 

 

 

今昔百鬼拾遺 鬼 (講談社タイガ)

今昔百鬼拾遺 鬼 (講談社タイガ)

 

 

 

今昔百鬼拾遺 河童 (角川文庫)

今昔百鬼拾遺 河童 (角川文庫)

  • 作者:京極 夏彦
  • 発売日: 2019/05/24
  • メディア: 文庫
 

 

 イヤー久しぶり読んだ。

ひさしぶりすぎて、すっかりあの京極節にあてられてしまい、とりあえず登場人物のおさらいがしたくなってしまい、とはいえあの厚みに再チャレンジする体力がないので漫画版でお茶を濁す

 

そもそも、京極堂のスピンオフのような感じであの拝み屋で古本屋の目つきの悪い人は出てこず、その妹の中禅寺敦子と前回の事件の関係者の少女「呉美由紀」ちゃんを軸にした物語。

 

で、読みだすと呉美由紀の以前の事件のにおわせが気になっちゃって途中でこちらの漫画版に手を出す。

 

ichieda.hatenablog.com

 

絡新婦の理で被害者の友達としてキーパーソンを務める、きわめて「まっとう」ではきはきしたかわいい女の子。ええ、もちろん読んだはずなのに全く記憶になかったですよ。

 

絡新婦の事件後、またしても自分の居場所が見つからないようなお嬢様学校に転校させられてしまう美由紀が、またしても立て続けに事件に巻き込まれるのだが、今回はすべて京極堂の妹、中禅寺敦子と美由紀が解決していく。

 

物語のテーマは以外にもLGBTなどが含まれる。

敦子が慎重に語るのに対し、美由紀は説明できないけどこんなのおかしい!と叫ぶ。

 

毎回、京極夏彦がやっていた言葉による憑き物落しを少女のまっとうな感性だけでやってしまう感じ。それはそれでスカッとする。

 

ただ、京極さんの少女に対する幻想がちょっと重めだと、四半世紀以上前の少女だった私は思うのだ。

 

いつもいつもこんなに、まっすぐでまっとうだったら、それはそれで鼻つまみ者になるだろう。少女ならあり、という感じが少し透けて見えているというか。少女に夢を持ちすぎだ。

 

いや、もっと気楽に楽しめばいいのだけど、ね。

そして、結局京極フィーバーに火がついてしまって言うのだけど。

(漫画版を・・・3シリーズ揃えてしまった)

 

 

さて、上記の3作、1冊1冊は極めて常識的な厚みであるがこないだ一冊にまとまって新書が出ていた。

 

今昔百鬼拾遺 月 (講談社ノベルス)

今昔百鬼拾遺 月 (講談社ノベルス)

  • 作者:京極 夏彦
  • 発売日: 2020/08/07
  • メディア: 新書
 

「先祖代代、片倉の女は殺される定めだとか。しかも斬り殺されるんだという話でした」 昭和29年3月、駒沢野球場周辺で発生した連続通り魔・「昭和の辻斬り事件」。七人目の被害者・片倉ハル子は自らの死を予見するような発言をしていた。ハル子の友人・呉美由紀から相談を受けた「稀譚月報」記者・中禅寺敦子は、怪事件に不審を覚え解明に乗り出す。(「鬼」)

複雑に蛇行する夷隅川水系に、次々と奇妙な水死体が浮かんだ。3体目発見の報せを受けた科学雑誌「稀譚月報」の記者・中禅寺敦子は、薔薇十字探偵社の益田が調査中の模造宝石事件との関連を探るべく現地に向かった。第一発見者の女学生・呉美由紀、妖怪研究家・多々良勝五郎らと共に怪事件の謎に迫るが―。山奥を流れる、美しく澄んだ川で巻き起こった惨劇と悲劇の真相とは。(「河童」)

是枝美智栄は高尾山中で消息を絶った。約二箇月後、群馬県迦葉山で女性の遺体が発見される。遺体は何故か美智栄の衣服をまとっていた。この謎に旧弊な家に苦しめられてきた天津敏子の悲恋が重なり合い―。『稀譚月報』記者・中禅寺敦子が、篠村美弥子、呉美由紀とともに女性たちの失踪と死の連鎖に挑む。天狗、自らの傲慢を省みぬ者よ。憤怒と哀切が交錯するミステリ。(「天狗」)

さすがの厚み。ポケット六法くらいはありそうな・・・ そして、お値段。

漬物はつけられないけど、ドアを開くために使ったりくらいはできそうなレベル。

 

さて、おかげさまでずっと卒業を決め込んでいた京極堂を再読しようと思いたったものの、取り合えず志水アキの漫画版から手を出しちゃっているのである。

(だってノベルスは重いんだもん)

 

志水アキといえば、京極堂シリーズのコミカライズをずっとやってくれている人で、イメージピッタリな絵が大変好ましい。

 

最近こんなスピンオフ?を出して話題作になっている模様(読まなきゃ・・・)

 

 

 さあ、今年の読書の秋は私は京極堂シリーズをちょっと読んでいこうとおもっている。

個人的には、民俗学とかそういうモチーフの本が読みたい気分。

何だろ、大人になったからだろうか?都会的でスタイリッシュじゃないミステリが読みたいのだ。

 

 

 

「空蝉処女」~おとめ、と読むんですよ。

横溝正史の「空蝉処女」を読んだ。うつせみしょじょですって!キャーと思っていたら、「処女」とかいて「おとめ」と読ませるらしい。

 

ほーここはイコールなものなのか?ま、いいや。

どちらにしろすごいタイトルだ。

 

由利先生シリーズだか、由利先生が出てくる話は少ない。

落とし話や、まんまといっぱいくわされた、犯罪というよりいたずら?のような話が多い。

 

空蝉処女 「由利先生」シリーズ (角川文庫)
 

終戦によって、ようやく人間らしい感情を取り戻していた私は、何年かぶりで中秋名月を愛でる気になった。五分あまり歩いて大きな池のあたりにさしかかった時、突如として、うら若い女性の美しい唄声が聞こえてきた。声に誘われ竹藪の中へ歩を進め.た私は、はたとその場に立ち止まった。行く手の小高い段の上に、月光で銀色に輝くワンピースに竹の葉影を斑々とさせて、神秘なまでに美しい女性が佇んでいた……。ロマンチシズムの極致。数奇な運命を辿り、今蘇った横溝文学異色の名作。

 

表題作「空蝉処女」を含む9編。以下簡単に感想を。

 

「空蝉処女」

月下の下に歌を口ずさむ美女は記憶喪失であった。

(ちなみに口ずさむ歌は「山のあなたの空遠く~」※)

うーん、美しい。なんにせよ、記憶も戻るし、謎も解決する市よかったよかった。

当時は、はやり既婚者と処女の区別というか差別はものすごかったのだな。

おとめの価値バリ高

 

 

玩具店の殺人」

絵面を想像すると美しい。闇の黒と血の赤、そしてカラフルなおもちゃたちの取り合わせがいい。

 

「菊花大会事件」

なぜか大阪弁の「宇津木俊介」が登場して思わず二度見する。

三津木俊介にしなかった理由はわからないけど、宇津木君の方がやや御しやすそうである。こっちが先だったりするのかしらん。

物語は、暗号もので結構重たいもので暗号を作るのだが、暗号作り終わったときには汗だくだろうと思われる。 

 

 

三行広告事件」

由利先生と三津木俊介コンビの短編。戦争色が強く出ていて、

(敵のスパイとか、鬼畜米英とか言っちゃってて)私たちが期待しているおおらかな時代のミステリーではないのが残念。

 

「頸飾り綺譚」

どうしても思い出せぬ。読んだはずだが。

 

「劉夫人の腕環」

美女とやたら目が合った時はご用心。

 

「路傍の人」

超推理力を持ってしまった、探偵の業を背負って生きているような登場人物が出てくる。ホームズは依頼人の素性をぴたりと当てるし、一応そう考えた理由が述べられるのだが、彼は違う。

とりあえず説明はできないけど俺にはわかってしまう!のであって、殺人犯がわかってしまっても動機にも興味がないし、警察に通報もしないのである。

強烈なキャラクターなので、これで誰かシリーズものを書くとよいのに(笑)

 

「帰れるお類」

お類さん、帰れてよかった!危うくくそ見たいな男と駆け落ちしちゃうところだったね。駆け落ちするつもりの相手からあんな手紙をもらったら、ほんとたまらん。

 

聡明なあなたがよもや本気にするとは思わず、ここにも来ていないと思いますが、万一のことを考え、この手紙を見も知らぬ車夫に託しておきます。あなたが来ていたとしても来ていなかったとしても、僕には一切わからないのでどうぞ安心してください。

 

ホントはもっと長ったらしいけど、嫌味を嫌味で挟んだ最悪のミルフィーユや!

お類さんマジでこんな奴と駆け落ちなんかしないで、少々だらしなくて不甲斐なくて金もないけど優しい旦那のところに戻れてよかったと思うよ。

 

「いたずらな恋」

まいったね、どうも。という感じの落語ような話。

全く人を食ったような夫婦もいたものですね。有閑マダムおそろしい・・・

旦那もかなり変態だと思うよ。

 

 

すべてあわせて、「異色の」短編集。だが「ロマンティシズムの極致」とまでなる盛りすぎでしょう。

 

だ・れ・か ロマンティック と・め・て~

 

 最後に「山のあなたの空遠く~」※といえばどうしても、広くみんなに知ってもらいたいのは桂枝雀師匠の「山のあなた」という落語。

※残念ながらYoutubeの音源が消されていたので、このハッピーをシェアできない。残念(2023年1月追記)

幸せな気分になれる落語である。大好き!

 

「血蝙蝠」ブラッドバッドマン!

横溝正史の由利先生シリーズ「血蝙蝠」を読んだ。

  

血蝙蝠 「由利先生」シリーズ (角川文庫)

血蝙蝠 「由利先生」シリーズ (角川文庫)

 

肝試しに荒れ果てた屋敷に向かった女性は、かつて人殺しがあった部屋で生乾きの血で描いた蝙蝠の絵を発見する。その後も女性の周囲に現れる蝙蝠のサイン――。名探偵・由利麟太郎が謎を追う、傑作短編集。

血で描かれたコウモリ。バットマンのマークみたいなのかなー

表題を含んだ短編集。

由利先生が全く出たかない話とかも多くなってきて、ミステリーからも遠ざかって、ちょっとした因果が巡っちゃうよねーと言った軽めの読み物が多いかも。

 

「花火から出た話」

やったらかっこいい男の人が出てきます。これは、もしかして金田一パトロンである風間氏ではなかろうか、と思い読んだ。

最後は、令嬢からの逆プロポーズ。さもありなん!

 

「マスコット綺譚」

手に入れたとたん幸せをもたらすという幸福のお守り。
ヒトを呪わば穴二つ、ではないけれどお守りは強力過ぎて副作用が激しい。

最後こんなものなくても幸せになれることを信じた主人公が海に投げ捨てる、絵になる良いイラストでした。


「銀色の舞踏靴」

由利先生出てきます。怪しい博士出てきます。

でも、由利先生よると、博士は普通怪しいので怪しい博士は普通の博士であるという理論で真犯人は別にいました。

こズルい小物感満載の男です。さもありなん。

「血蝙蝠」

間違って殺された女優さんが不憫でならない。

横溝の書く女優にしては、純情で一途だが作中では一言も喋らずに殺される被害者役。
(それでか)犯人のサイコパス度に嫌気が来る短編。

 

「八百八十番目の護謨の木」

880番のゴムの木と思っていると、まったく意味が通じなくなる話。

kindle読み上げ機能だとそう聞こえるので意味が通じないのだ)

死の寸前に自らの血で書かれた文字、ダイイングメッセージ(!)もの。

つい最近も似たような話を有栖川有栖で読んだけども、漢数字で八八〇 と書くと・・・別の文字に見える!というやつ。

いわゆる、推理小説家の王道なんだろうなぁ。

本当の警察官に「あなたはダイイングメッセージをみたことありますか?」という質問してみたい。

 


「二千六百万年後」

まさかの、SF。まるで藤子不二雄のSF短編のような話である。

肩甲骨が発達して飛翔ができるようになった人類。「飛べない人類が昔いたというが本当だったのか!」と逆に驚かれてしまうのだ。おもしろい。

 

他にも「X夫人の肖像」「恋慕猿」「物言わぬ鸚鵡の話」の三編についてはつい最近読了したばかりだというのに、すでに記憶にない。

 

サルとオウムときたので後は犬が欲しいところである。

表題は英語に直訳してみただけだけど、バッドマンといえばこちらもおすすめ

 

BILLY BAT(20)<完> (モーニング KC)

BILLY BAT(20)<完> (モーニング KC)

 

 

とりあえず歴史に少しだけ詳しくなる、学習マンガの一面も!?

 

 

 

 

 

「スイス時計の謎」選民思想ってやーねー

有栖川有栖の「スイス時計の謎」を読んだ。

スイス時計の謎 (講談社文庫)

スイス時計の謎 (講談社文庫)

 

 

2年に一度開かれていた“同窓会(リユニオン)”の当日、メンバーの一人が殺され、被害者のはめていた腕時計が消失! いったいなぜか……。火村の示した間然するところのない推理に「犯人」が最後に明かした「動機」とは。表題作ほか謎解きの醍醐味が堪能できる超絶の全4篇。ご存じ国名シリーズ第7弾、これぞ本格だ!

 

表題作含む中編4本。立て続けに読みすぎたせいで頭の中がこんがらかっているが、有栖と火村のキャラクターは私の中でどんどん成長し息づき始めた。

 

 

それにしても、スイス時計の謎は私にはちょっとよくわからなかった。

有栖さん、読者は思ったよりおバカやで。(私だけ?)

全員でおそろいの時計持っている、いわゆるエリート意識の塊の男ども。

被害者も犯人もこの中の一人なのだが、犯人を一人に絞り込むロジックが難しいのだ。

たぶん、紙と鉛筆を持ってまじめに追っかけたらわかるのだろうが、読むだけではよくわかんない。

 

しかし、よくわからないけどエリート志向ってやあね。というのはわかった。

あと、最後犯人がなぜ殺人を犯してしまったかもわかった。

これに関しては理解はしたが共感は到底できない。

 

他にも、以下の3作を含む中編集

 

あるYの悲劇

 

いわゆるダイイングメッセージもの。

とあるインディーズバンドのギタリストが

Yと読める(ここ重要、そして定石)血文字を残して殺された。

なるほどね!のオチだったけど、本格ミステリマニア以外は怒るかもしれない。

 

言わずと知れたこちらの作品から取られた題材

 

Yの悲劇

Yの悲劇

 




女彫刻家の首

タイトルだけだとコレを思い出すよね。

怖くて酷かったことしか覚えてない衝撃作。

 

有栖版女彫刻家は被害者でした。

えらい目にあってお気の毒だが、なぜ首を切り落とさなければならなかったか、を掘り下げていくホワイダニット

 

 

シャイロックの密室

 

シャイロックとはシェイクスピアに出てくる金貸しのことなんですって。

この作品で知ったのだが、そんな意味があるなんて知らなかった。

 

シャイロックの子供たち

シャイロックの子供たち

 

こちらは、犯人が意外と間抜けだ。

すごい職業がら持っている、あるものをつかったトリックを思いつく。コレで完全勝利かと思いきや間抜けすぎる理由で、つかまってしまう。あーあ。

 

 

 

モロッコ水晶の謎

有栖川有栖の「モロッコ水晶の謎」を読んだ。

 

 

モロッコ水晶の謎 (講談社文庫)

モロッコ水晶の謎 (講談社文庫)

 

とある社長邸のパーティに招かれた推理作家・有栖川の目前で毒殺事件が発生! 邸内にいた十人の中でグラスに毒物を混入できたのは誰か、そして動機は……。犯罪学者・火村が超絶論理で謎に挑む表題作ほか「助教授の身代金」「ABCキラー」「推理合戦」を収録。本格推理の醍醐味に満ちた〈国名シリーズ〉第8弾。

 

とうとう以前買った「国名シリーズ9冊合本版」の最終話である。

 

 

 ややこしいが、9冊合本版の1番最初の一冊だけは、国名シリーズではない。

 

合本版、1冊ずつの余韻とか全くなくすぐ次に行くので(私が読み上げ機能でしか読書していないからだけど。)あっという間に読んでしまい、ちょっともったいなかったかな?

 

出版を今か今かと待ちわびる時間がなかったので、楽しみは半減。

でもまだ完結していないようなので、今後は歳をとらない火村と有栖をずっと追いかけ続けねばならない。

 

どちらかというと、完結した話が好きなので進撃の巨人もキメツの刃も完結号が出たら改めて教えてくれたまえ派だ。

 

なので、ガラスの仮面!そろそろマジでお願いしますよ!

もうさー宇宙とかまで出てきちゃって、広げた大風呂敷を回収するとこを観ないと死ねない。

 

話がそれがた。

今回の「モロッコ水晶の謎」は下記の4つの中編集。

 

「モロッコ水晶の謎」

資産家で起こる殺人事件にたまたま(そろそろコナン化してきた?)遭遇した有栖。

その家には若いころ外国をさまよってきた占い師の女とその姪も一緒に暮らしていたのだが、そもそも、家に占い師を寄宿させるお金持ちってどんだけじゃ~。

 

この占い師、当たると評判の割には意外と気弱で、自分に降りかかる火の粉すら払えない様子。まんざら当たらないペテン師でもなし、なぜにわざわざこの家に住み着いているのかな?っと思いきや案外ほほえましい理由だった。

 

だが、容赦なく起こった殺人はそんな彼女の占いを利用?というより妄信した、

そう言う考え方もできるが、だがしかし、と思うような驚きの動機。

 

まあ、ある意味中途半端に力のある占い師のせいでこんなことになったともいえる。

 

 

助教授の身代金」

この話を書いたときは、准教授という制度ができる前で火村の身分も助教授だ。

だが、ここで誘拐されたのは火村ではないのでご安心を。

たしか、この話はドラマ化された中に入っていたはず。

ほんで、大島じゃなくて児嶋さんが出てたはずよ。

(調べた。でてた。それにしてもグーグルすごい。’大島じゃない’で検索して、無事ドラマのとこまでたどり着くからね。)

彼の犯人役ははまり役であった。

 

「ABCキラー」

こちらもドラマ化されていた話。

Aという場所でイニシャルがAの人が殺される、というアガサクリスティ「ABC殺人事件」を模した連続殺人か?と大騒ぎになるが実はというやつ。

このトリックね、すごいと思う!

犯人の奸智に憤りを感じる、ってやつですよ。

いや、憤りを通り越して天才かと思うやつですわ。

 

私といえばドラマに、原作には出てきていない女子が出ていたことの方が憤りを感じている。 何年も前のドラマに思い出し憤りしてもしょうがないんだけど。

 

ABC殺人事件 名探偵ポワロ

ABC殺人事件 名探偵ポワロ

 

 こちら、タイトルだけは有名だが実は読んだことない人多いのでは?

(私は去年読んだし!なんのどや顔かわからんけども。)

kindleunlimitedで読めるので未読の方はぜひ。

さすが名作、というかポアロが想像以上にかわいい感じで、にやついちゃった。

多くのパロディだったりパクリだったり、パスティーシュだったりを生み出すのは、名作だからこそですな。

 

「推理合戦」

 

推理小説家の舞台裏を少しだけ垣間見させてくれるようなお話。

人も死なないし、にやりとさせられていい話だと思う。

私も焼き鳥が食べたくなってきた(割と年中食べたいけど)

 

以上、4編。どれもこれもある意味うまい!と思うお話ばかり。

ミステリはこうでなくちゃ、という心地よい読後感。

 

それにしても、ドラマでも結局うやむやだった火村の「人を殺したいと思った」とかいう、あやうい過去は全く進展なし。

 

割と今まで順番関係なく読んできたので、そろそろ出版順に読み返してみないとな。

 

そういえば読書の秋だし。