横溝正史の「刺青された男」を読んだ。
灼熱の外洋でも、絶対にシャツを脱がない大男の船乗りがいた。他人に見せられない刺青をしているという噂がある男だ。ある日、私が船医をしている船で、船員同士の傷害事件が起きた。被害者は日頃、仲間からゲジゲジのように嫌われている腕自慢の水夫である。片目をつぶされ、肋骨をヘシ折られた瀕死の状態で運ばれてきた。喧嘩の相手はなんと、あの謎の船乗りだった。彼はいつの間にかボートを盗み、船から姿を消していた。表題作ほか9篇を収録。
「神楽太夫」「靨」「刺青された男」「明治の殺人」「鑞の首」「かめれおん」「探偵小説」「花粉」「アトリエの殺人」「女写真師」の10篇が納められた短編集。
なかなか読みごたえがあった。
特に面白かったのは、神楽大夫、刺青された男、靨 かなぁ。
「刺青された男」は、タイトルそのままではあるんだけど、酔っぱらった勢いでおしゃれなワンポイントタトゥーを入れようとした男が、とんでもない刺青を入れられてしまう、という話。
胸に入れられたその刺青を絶対に人に見せないようにしていた男は死の間際ようやくこの胸の刺青について、看取ってくれる医師に告白を行う。
たしかに、そりゃみられるわけにはいかない内容だわ。
読者にもずっと謎なその刺青の内容はネタバレになるので言えないけど、こんな私刑のやり方もあるのか、とゾットする話。
ゆめゆめ、カッとなったり、酒を飲んでタトゥー入れようとしたりしてはいけませんなぁ・・・それにしても縁ってすごいわ。
「神楽太夫」はもう少し膨らませて長編で読みたかったような作品。
悪霊島要素がはいっていて、世間でいう「横溝らしさ」が堪能できる。
「靨」はなんか漢字の字面だけ見るとややこしい虫見たいな字だけど、えくぼと読むらしい。
よくよく見ると「厭な面(ツラ)」って書いてあるやん!と思って思わず検索したら、こんな親切なページ発見。
huusennarare.cocolog-nifty.com
下にくぼむという意味からきているらしいけども、常用漢字ではないとのこと。
これは読めんわ。
横溝せんせのえくぼは恋愛小説のような推理小説。とても読後感がよかった。
表紙を見ていわゆるジュブナイルかなーと思っていたけど「怪獣男爵」とかは出てこず、しっかり大人向けの内容で読み応えあり。
しんみり。実はこれ「横溝正史kindle読み放題」だった時に最後に読んだ本である。
2カ月続いた読み放題もとうとう8月には解除されてしまったのだ・・・
今回は、人形佐七シリーズに手を出す時間がなかったので残念。
というわけで、さんざんっぱらお世話になった(うえに散々ここでも宣伝した)kindleunlimitedを解約した私。
とりあえず先日解約したばかりだけど、すでに禁断症状もではじめてもいる。
なんだかんだ言って、読むものに困らなかったし何よりもあまりの検索性の悪さを逆手に取った、読みたい本の宝探しが楽しかったのよ~
しかし、最近京極堂ブーム再燃しちゃっててメルカリで大概古本買っちゃっててですな、読みたい本が溜まってるので、本買うの封印する!したい!するんじゃないかな?した方がいいと思う!いや、ま、いっか。夏だし。休みだし。