岸本佐知子の「ひみつのしつもん」を読んだ。
頭くらくら、胸どきどき、腰がくがく、おどる言葉、はしる妄想、ゆがみだす世界は、なんだか愉快。 いっそうぼんやりとしかし軽やかに現実をはぐらかしていくキシモトさんの技の冴えを見よ! イラストは今回も、クラフト・エヴィング商會!
『ねにもつタイプ』『なんらかの事情』に続く、『ちくま』名物連載「ネにもつタイプ」3巻め。
読み終わるのが残念過ぎて、一回につき2話しか読まないと決めていた。
読み始めと読み終わりでは全く違うところに着地しているような、とにかく「キシモトワールド」としか言いようがないエッセー。
どの話もおもしろすぎて、全頁引用したくなってしまうが、まずはリンク先のアマゾンさんに載っている表題作「ひみつのしつもん」を読んでほしい!
ログイン画面でパスワードを忘れたとき用の保険で「いくつかの質問に答える」というのがある。
彼女は「子供のころの親友の名前は?」と選んだというのだが、ところが小六のとき毎日のように遊んだ「ゆりちん」でも、小二のときの「としこちゃん」でも、園児時代の「サキちゃん」でもない。軽く焦ってとうとう、妄想上のお友達、イマジナリーフレンドのことまで思い至っているうちに、質問が変わっていたという。
ああ、もう私が説明しても全然面白くない!よんでほしい!
ちなみに私の秘密の質問は「好きな食べ物は?」「エクレア」だ。
小学校時代に読んだこの本の「中のクリームがこぼれないように稲妻のように素早く食べなければいけないので、フランス語の稲妻=エクレアという名がついた」というエピソードに由来している。
な、なつかし~!!!
こんな感じで、キシモトさんの脳内であちらにとびこちらではじける不思議な世界。
受けを狙っているわけではない(たぶん)のにどうしてこんなに面白いんだろう。
私の好きな話はジュンサイの話。身を守るために出したぬるぬるがおいしいとかえって人間に食べられてしまう、ジュンサイの過剰な何かについて語られている。
閉塞感あふれるこの時代、ぜひぜひ読んでみてほしい!