角田光代の「愛がなんだ」を読んだ。
先日読んだ「かかとにご飯つぶ」の中で、「私に小説家になりたい」と思わせてくれた最初の一冊と紹介されていた恋愛小説。それもとびきりクレージーな。
主人公の山田さん(テルちゃん)は、田中くん(マモちゃん)のことが好きで好きでたまらない。
その度合は常軌を逸しており、会わないかと言われれば例え仕事中でもすぐに飛んでいき、そのため仕事を首になるほどだ。
なのに、マモちゃんはそんなテルちゃんのこと恋人にはしてくれない。
都合の良い存在として扱い、自分の好きな女の子を紹介したり、一緒に遊びに誘ったり、その子にあげるためののプレゼントを買いに行かせたりするのだ。
友達がみなそんな男は辞めてしまえと言っても、テルちゃんは
「マモちゃんにプラスの部分を好きになったのなら、嫌なことさえ数えて行けばマイナスになって嫌いになれる。でも私は最初からマイナスの状態のマモちゃんをすきになってしまったのだ」と言い放つ。
そう、山田さんはマモちゃんを好きな自分を、自分でもどうかしていると思っている。それでも想いが止まらないのだ。
それは、悲恋とか大恋愛とかそんなキレイなものではなくて、努力の方向がおかしくてなんかちょっと面白いかなと思うけれどその奥には狂気が隠れていて怖い。
愛がなんだ、というタイトルはどこから来ているんだろう。
テルちゃんみたいに好きになりすぎてしまうというのは、何だがもう恋愛とかじゃなくて信仰みたいで空恐ろしくもある。
誰かから「そんなの愛ではない」と言われたときの回答としての「愛がなんだ」じゃないのかな。
やっていることは十分ストーカーだし、最後までテルちゃんの努力は報われず、マモちゃんと会えるのであれば、「マモちゃんの友達の彼女」になるという、一周回った着地をする。だからもう、テルちゃんは好きとか愛とかの一線を超えちゃたんだと思う。
その思いに名前があるのかはしらないが、この小説がもう少し長くなるのであれば、テルちゃんはマモちゃんを殺すと思う。もう彼女は止まらないのだ。
2019年に映画化されているみたい(プライムで見られるみたい)
(しかも、マモちゃんが好きな女「スミレさん」はあの江口のりこだ)
あの人いいよね~
「私はただ、ずっと彼のそばにはりついていたいのだ」――OLのテルコはマモちゃんに出会って恋に落ちた。彼から電話があれば仕事中でも携帯で長話、食事に誘われればさっさと退社。すべてがマモちゃん最優先で、会社もクビになる寸前。だが、彼はテルコのことが好きじゃないのだ。テルコの片思いは更にエスカレートしていき……。直木賞作家が濃密な筆致で綴る、〈全力疾走〉片思い小説!
次に読みたい本
森永卓郎さんの逝去を悼みます。合掌。
ほんと、前日までラジオにでたり、たくさん本を書いたりすごいなぁと思う。
まだお若い。残念。