日本一の造船成金といわれる大富豪雨宮万造が、喜寿の祝いに造らせた黄金の模型船。船首にはダイヤが燦然と輝やき、その豪華さには誰もが眼をうばわれた。ところが、謎の怪盗風流騎士がこの黄金船を狙っているという噂が流れ始めた。駆けつけた警察が邸の内外を監視し、黄金船のある大広間では万造の孫恭助がしっかりと見張っていた。だがその時、恐るべき怪盗はいつのまにか忍び込んでいたのである。由利先生と等々力警部の異色コンビが、狡猾な犯人と対決。表題長編ほか2篇収録。
この表紙!いやぁ怖い。よーく見ると、顔の上半分だけ仮面。
表題作「双仮面」にちなんでいるようで、加えたバラも見どころの一つでございます。
この作品横溝先生の初期の作品ということでちょっとなめてかかっていたのだが、なかなかどうしてスリリングな展開と思わぬ真相と、一気読みのよい話だった。
それにしても、由利先生の時代は「風流騎士」だの「幽霊紳士」だの、なんというかタキシード仮面的な名前の付け方の、いわゆるよい怪盗が出てきがち。
今回は由利先生もかっこいいし、風流騎士もかっこいいし、それだけもう一人の男のダメさが際立っていた。
それにしても時代とはいえ、外国人に対する表現が少々差別的である。今だったらアウトだとおもう。
ほかにも下記の2篇を含む中編集。
「鸚鵡を飼う女」
女性殺しの疑いをかけられた由利先生の知り合いの役者。巻き込まれたのは海賊同士の女の取り合いの内輪もめだったらしいのだが、長崎とか海賊とか出てきてなかなかの江戸時代感。
「盲目の犬」
飼っている犬を凶器に使った殺人?
確かに本気になれば犬のポテンシャルは十分生き物として人間を超えるだろうなー
あ、最近いっぱい散歩しているトイプーとかああいうキャンキャンって感じのやつではないよ。もちろん。
とにかく犬を凶器にするために日々苛め抜いて飼育するという、ある意味真珠郎の動物版のような話。
話のなかにあの「等々力警部」が出てきてしかも若い!のでなんかにやけちゃった。
金田一耕助と一緒に操作する等々力警部の若い頃が垣間見れちゃうのである。