室橋裕和の「カレー移民の謎」を読んだ。無性にあのカレーが食べたくなる一冊だ。
私は昭和であれば黄レンジャーとあだ名が付く程度にはカレー好きなのだが(うそ、ちょっと盛った)ランチでよく行くネパールの人たちがやっているカレーと、日本人経営者が作るおしゃれなカレーの値段の違いをずっと疑問に思っていた。
大きな焼き立てナンがついて、サラダとラッシーまでついて1000円以下で食べられるなんて、ありがたい通り越して少し不思議だと思っていたが、カラクリがわかって納得だ。
本書ではこのカラクリを「スパイシーな真実」と書いていたが、スパイシーかしょっぱいかは別として、なかなか根深い問題が隠れているようだ。
上手く説明できるかどうかわからないが、簡単にこのスパイシーな真実をまとめてみた。
ネパールから来た人がやっているカレー屋は「インネパ(インドネパールの略)」と呼ばれまるでテンプレートのように同じようなメニューが並ぶ場合が多い。
いわゆる、「大きなナン、カレー、サラダ、タンドリーチキン」で1000円くらい。
主に、サラリーマンのランチメニューとして人気のものだ。
なぜ、こんなにも似ているのか?それは、最初に成功した型を忠実にコピーをしているから。
ネパールにはそもそも出稼ぎ文化があり、日本も人気の出稼ぎ対象国のひとつ。
彼らは親戚や知人を頼って日本に「カレーを作りに」やってくる。
そして、成功した先輩のお店の真似をしていった結果、日本全国に同じようなスタイルのカレー屋が出来たのだそうだ。
残念ながら彼らに「カレーへの愛情がない」というのが、スパイシーさの理由の1つだ。
彼らは日本に来るときに「料理人」であるとして技能ビザを取得して入国してくる。
そのため、にわかやなんちゃって料理人も多く、日本に来た彼らは言葉は悪いが日本に来るのが目的で、カレーに対するこだわりもなく、あまり工夫も冒険もせずに同じような形態のカレー屋を作るというわけなのだ。
もっと言葉を選ばずに言うと、教育レベルも高くないので、経営についても不勉強のため価格でしか勝負出来ず、値段はいつまでも安いままなのである。
もちろん、例外もたくさんいるというのを言っておかないといけない時代なので付け加えておく。
この本は、カレー屋2世と呼ばれる本国から呼び寄せた彼らの子どもたちの教育機会の損失や本国の過疎化問題などにも踏み込まれていて、なかなか根深いのである。
ただ、この作者はカレーに対するネガティブな感情はなくて、むしろこの手のカレーを愛している事が伝わってくる。
本当のネパール料理割とあっさりした料理らしく、このカレーは「日本人向けにネパール人が作ったインド料理」という謎料理になってしまっているんだそうだ。
確かに、「あんこナン」などははその典型であろう。
読み終わると猛烈にインネパカレーを食べたくなる、危険な本でもある。
【どこにでもある「インドカレー店」からみる移民社会】
いまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。
そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?
どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?
「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか……その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。
おいしさの中の真実に迫るノンフィクション。
【目次】
はじめに 「ナン、おかわりどうですか?」
第一章 ネパール人はなぜ日本でカレー屋を開くのか
第二章 「インネパ」の原型をつくったインド人たち
第三章 インドカレー店が急増したワケ
第四章 日本を制覇するカレー移民
第五章 稼げる店のヒミツ
第六章 カレービジネスのダークサイド
第七章 搾取されるネパール人コック
第八章 カレー屋の妻と子供たち
第九章 カレー移民の里、バグルンを旅する
おわりに カレー移民はどこへ行くのか
次に読みたい本
いろんなものを食べてみたい。
本書にも書かれていたが日本人は割と色に対して貪欲な冒険家揃いなのだ。