三田紀房の「徹夜しないで人の2倍仕事をする技術~三田紀房流マンガ論」を読んだ。
漫画家というかクリエイター向けの「励まし」の書。いや励ましと言うか、身が引き締まる「叱咤激励」の話かな。
何十年も週刊連載を複数抱えて第一線で描いている「俺様」の言葉だけに説得力がある。
タイトルには「徹夜しないで」とあるがそれは、漫画家業界では慣例となっていたアシスタントたちと徹夜する働き方をある時変えてみたエピソードから来ている。
それまではアシスタントに働いてもらうために常にたくさんのお菓子を準備して、徹夜など当たり前の働き方をしていたが、身体を壊してて離脱する人が多く定着率がわるい。
ある時思いっきってフレックスタイム制をやめて「朝9時から勤務残業なし」にしてみたら意外と好評でスタッフの定着率もよくなりスキルもあがるので、全体パフォーマンスもあがると、よいことづくめであったと。
睡眠大事、っていう話。ではなく、慣習を疑えっていう話。
徹夜して頑張って、という働き方はパフォーマンスが良くないのだ。
ほかにも、「まずは描け」という胸に刺さるお言葉もある。
なぜ、みんなある程度準備ができてからやろうとするのか、準備をしている間は一円も稼げないのだぞと。
バッターボックスに立たなければヒットも飛ばせない。
ちなみに彼は、サラリーマンをやめて実家の洋品店を継いだもののジリ貧で「お金がほしくて、初期投資が少ないから」漫画描いてみたらしい。
なんと、初めて書いた漫画で受賞して以後、漫画家でいるのだそうだ。
確かにドラゴン桜の絵は「どうした?」っていうくらいデッサンが狂っているときがあり、ネットでしばしばいじられている気もするが、そんなのどこ吹く風だ。
ほかにも「ベタな表現を恐れるな」などの教えもある。
これは、「ネームに時間をかけすぎて締め切りを守れないくらいなら、凝った表現なんかやらずにシンプルに制作をしろ」ということだし、「人のマネをしろ」は漫画家なら真似されたらむしろ評価されたともうはず。どんどんマネをしよう!というう教えだ。
もちろん、マネといってもアイデアをパクるとか似たようなキャラクターを出す、という単純なやつではなくて、コマ割りの手法やセリフ回しなんだだろうけど、「私もミナミの帝王を真似した」となかなか飾らないお人柄である。
というかギラギラしている。この熱さが業界で数十年も仕事続けられた本当の理由かもしれない。
漫画家だけでなく、すべてのクリエータには刺さるのではないだっろうか。
さあ、私もトットと寝よう。
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こちらは、受験勉強とスポ根を組み合わせてみた作品らしい。