レイモンドチャンドラーの、というかレイモンドチャンドラーが憑依した村上春樹の「ロング・グッドバイ」を読んだ。
私立探偵のフィリップ・マーロウは、億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。しかし、やがてレノックスは妻殺しの容疑をかけられ自殺を遂げてしまう。が、その裏には悲しくも奥深い真相が隠されていた……村上春樹の新訳で話題を呼んだ新時代の『長いお別れ』が文庫版で登場
邦題「長いお別れ」も大概の人のハートをわしづかみにしてきたはずだが、あの村上春樹の新訳が出ていると知って読んでみた。
ハードボイルドの金字塔と言われ、多くの名台詞があることでも有名だが中でも
「ギムレットにはまだ早い」
は超有名かもしれない。
出典を知らなくてもこのセリフは知っている人も多いのでは。
さて、このセリフどういう意味か私は完全に間違った解釈をしており、今日読み終わって軽く衝撃を受けているのだ。
10代後半に読んだはずなんだけども、ちっとも覚えていないのでもしかしたら「ハードボイルドを読む自分」へのあこがれが強すぎる記憶の捏造?・・・
というくらい誤解していた。
まじで
「ギムレット(はアルコール濃度が高いので、一杯目には)まだ早い」
だと思っていた。
かけつけ3杯とか言われて育った時代なので、「まずはビールでしょ」みたいな?
びっくりするぐらい全然違った。もっとずっと奥深くかっこいいセリフであった。
ちなみに春樹訳では「早すぎるね」になっている。
どちらにしろ、主人公の私立探偵フィリップマーロウのセリフではなく、友人の別れ際のセリフになる。
おっと、これ以上言うとネタバレになっちゃうぜ。
とにかく、このフィリップマーロウときたら、かっこよすぎて一回も崩れないのだ。
これって、今の時代の「ハードボイルドのテンプレ」みたいになっちゃって、
真似するとかっこ悪くしかならないので、誰も真似ができない作品だと思う。
かといって、硬くて面白みのない男と思ったら大間違い。
シニカルな観察眼や、独特の言い回し。おちょくってんのかもしれない話し方・・・
村上春樹訳がくせが強すぎて読んでると、自分がマーロウみたいなしゃべり方(をしようとしてるだけだけど)になってしまうのだ。
つまり、かなり中毒性が高い。
何にせよ読み終わったら、ギムレットを飲んでみたくなること請け合いなのである。
もちろん私はギムレットについてもリサーチした。
マーロウの友人レノックスのギムレットについてのうんちくが面白い。
今のレシピとはだいぶん違うようで、その通り作ると結構甘くなるのでは?
という人もおられた。現在のギムレットはジンベースの結構辛口のカクテル。
私?私ももちろんギムレットを、と言いたいところだがやっぱりビールを飲んでしまいましたとさ。
(最近ではキリンの金色の期間限定のビールが華やかな感じがしておいしかった。)
ちなみに映像化もされているみたいでいろいろヒットしたけどAmazonにはなかった?謎。ちなみに、この長いお別れNHKで日本版もドラマ化されているっぽい。
マーロウ役を浅野忠信、レノックス役は綾野剛らしい。なかなかな感じ。
面白そう。