今年の本屋大賞を受賞した流浪の月を読んだ。
どうしよう、本屋大賞に対する私の信頼がさらに高まったよ!
本屋大賞にハズレなし、を確信したね。
逆にいうと、本屋大賞でなければ手に取ることもなかった気がする作家さんだった。
【2020年本屋大賞受賞作】
せっかくの善意を、
わたしは捨てていく。
そんなものでは、
わたしはかけらも救われない。愛ではない。けれどそばにいたい。
実力派作家が放つ、息をのむ傑作。
被害者としてデジタルタトゥを押された更紗と、その加害者とされた文の、恋愛でも友情でもまして犯人と被害者として憎しみの感情でもない関係。
ただ、2人は名前をつけられないその想いをきちんと守り通すことができた。
せつないけど、そしてやりどころのない怒りと虚しさを覚えるけども、ハッピーエンドなんだろうと思う。
この話、ホントに辛い。
少し浮世離れしていると言われる更紗の母。
綺麗なものが好きで、荷物が嫌いで、いつもパパ大好きとキスをする、そんな母は父の死とともに本当にダメになってしまう。
幼い娘も守れないほどダメな人間に。
他人の目など気にしない強い人に見えたけど、本当はとても弱い人だったようで、幼かった更紗は、伯母の家はやられそこで従兄弟の性的虐待をうけてしまう。
これ以上あらすじをダラダラ書いてもしょうがないのだが、この話には誰1人明確な悪意がある人は出てこない。
(1人いるけど。名前を呼ぶ価値もない従兄弟が)
更紗が帰りたくないと思う家の伯母も、DV彼氏の亮くんも、彼女を保護した警察も、被害者女児として遠巻きに眺める世間も。
ただただ更紗の話しを聞かないだけで、自分の理解できる世界の中に更紗を引き止めるだけだ。
みな、更紗をかわいそうな被害者だと思って、そこから動かない。
更紗は文に助けてもらったと思っているし、文も更紗に自由にしてもらったと思っているのに、
更紗と文は誰にもわかってもらえない。
まさしく、恋愛ではなく友情でもなく、あえていうならば依存?足りないものを埋め合うような関係。
この作家さん、これまではBL小説などを書いてた人らしい。
なるほど、この、個人と個人のここだけの関係性の描き方のうまさはそこがルーツということなのだろう。
まあ、滅多にこんな関係性はないと思うけど。
わかったようなことを言ってらがBL小説は読んだことない。三浦しをんの受け売りだ。
最後に語彙力のなさ満開だが、すごいヤバイ小説です。