伊坂幸太郎のペッパーズ・ゴーズトを読んだ。
少しだけ不思議な力を持つ、中学校の国語教師・檀(だん)と、女子生徒の書いている風変わりな小説原稿。
生徒の些細な校則違反をきっかけに、檀先生は思わぬ出来事に巻き込まれていく。
伊坂作品の魅力が惜しげもなくすべて詰めこまれた、作家生活20年超の集大成!
著者は本書に「興味あることや好きなもの、心配なことや怖いこと」を詰め込んだと書いている。
そう、今みんなを悩ますコロナのことを念頭に置いているのだろう、このお話は「飛沫感染」「テロ」「ネコ虐待」などと怖いことがたくさん描かれている。
でも、「飛沫感染」して起こることは、他人の未来が(といっても明日)ちょっとだけ見えるというどう役立てていいのか悩むプチ超能力だし、
「テロ」も恐ろしいけれどもそれでもテロの被害者遺族がテロの連鎖を止めるべく立ち上がる「テロ」だし、
「ネコ虐待」は完全に因果応報ネコジゴハンターなる必殺仕事人がネコの仇をうつ話と、なんだか深刻になるちょっと手前でお手柔らかにしてくれている。
この話はプチ超能力者の檀先生の視点からと、アメショーとロシアンブルという2人のハンターを見つめる神の視点からが交互に語られる(これは、中学生の女の子の小説というていなんだけど)
女の子の小説の登場人物であるネコジゴハンターの二人が「俺たちは小説の中の登場人物なんじゃないか説」を繰り広げたりするあたり、メタミステリー感が出てくるのだが最後はこの二つの話が、あれよあれよと「よりあわされて」最後は一つの糸として紡ぎだされ、檀先生の、つまり私たちの世界に収束されていく(ってそれも小説の世界なんだけど、考え出したら何が何だか分からなくなる)
ここら辺が「さすが伊坂幸太郎」とうならせられる~。
って何様な感想で申し訳ない。
さすが作家生活20年の集大成というだけあって疾走感があって、最後にクスリとさせるいい終わり方。
始末人2人の掛け合いは「マリアビートル」などの殺し屋シリーズを彷彿させる軽妙さがある。
恐ろしい話も彼にかかればエンタメに振り切ったこんな話に昇華出来るんだなぁ
そして、読者の読後感のことまで心配してくれているあたり、もう「匠の小説」だ。
読書の秋、疾走感のあるエンタメ小説を読みたくなったらぜひ。
っていうかネコジゴハンターシリーズになんないかしら。