カトリック系の女子高に通う那由多、淑子、翠。三人の少女がそれぞれ語る物語。
痛いほど研ぎ澄まされた感覚。私の少女時代にも確かにこんな痛みを抱えていただろうか?こんなに考えていただろうか?
(きっともっとぼ~っとしてた)自分にもたしかに少女時代があったとは思えない。
衝撃をうけた那由多の行動。『だれもわたしを一番にしない』と考える淑子。いない兄を想像する翠。
三人の個性が文章の漢字の量などにも現れていて見事。
最後まで淑子は行方不明のまま見つからない。那由多の押しつぶされそうな恐怖も収まらない。翠も孤独なままだ。
それでも、それぞれに何かに傷つきながらも、生きる。生きることを決めた。そんなラストであった。
いじわるな神がパンドラの箱に最後に残した災厄それが希望だと翠は思う。
しかしその希望を感じさせる終わり方であった。
読み終わって濃度の高いため息が出そうな一冊です。