しをん嬢の処女作で、就職活動中の女子学生の社会に出ていくことへの不安と怒りがつづられています。
あとがきで重松清氏が述べられているように、夏目漱石の我輩は猫であるに通呈するようなユーモアと風刺と古風な語り口。
内容は、政治家一族の娘として生まれた可南子は、70歳のおじいさんと付き合っていて、のんきなマスターのいる喫茶店でアルバイトをしている就職活動中の女子大生。
社会に出ることに対する不安、壊れやすい家族のこと、ジェンダーのこと、いろいろ考えて少しずつ答えを出そうと格闘しています。
それはマイペースで笑いにくるんでいるけれど、消して簡単な問題ではない。それでも、好きな事を仕事にしたいとがんばっている。
読んでいて心に残るのは同性愛についての考え方や女性の就職の難しさ。
私も女性が当たり前に働くことがどれだけ難しいか思い知らされたクチだ。
出産に伴い仕事をやめたときは思わず上司に対する呪詛の言葉が出たものだが、今となってはかなり考え方が変わってきた。
気持ちの整理には時間がかかったし、今でもうまく言い表せないけれど、自分が女性に生まれたことを不幸とは思っていない。
この小説も、根底は前向きでパワフル。だからこそ諦めそうになったり回りに流されそうになっても、自分の言葉で語る可南子を応援してしまう。
これから就職活動をする人は、是非読んで欲しい。それから、自分の知人が同性愛者だったときも。