高野文子の「いずみさん、とっておいてはどうですか」を読んだ。
「昭和のくらし博物館」に届いた荷物。その箱に入っていた人形やままごと道具、絵日記から、高野文子と調査員が持ち主の姉妹の物語を読み解き、その記憶の世界を再構成する。
私の両親世代の人達が小学生だたころ、昭和30年代くらいの日本の子どもたちの暮らしが垣間見える本。
読むと言うよりはパラパラ眺める感じ。
いやー、それにしてもなんと物持ちの良いご家庭でしょうか。
当時姉妹が遊んでいたお人形さんや、その洋服など細々したものをきれいにとってあって、今流行りの断捨離も良いかもしれないけど、真逆の尊さがあった。
そんなものまで取ってるの?から、よくぞ取っていてくれました!になっている。
中でもすごいのはお人形。
今で言うメルちゃん人形くらいのマリーさん人形のお洋服を手作りで作っていて、圧巻だった。
手作りは、洋服だけではなく、小物も自分たちで作っているのだが、その丁寧な作業は遊びイコール生活の訓練になっているのでは。
たとえば今、子供の人形なんてそれこそ100円ショップでも買えちゃうわけだが、私たちはそれをすぐに消費してしまう。
それって本当に豊かなのかな?
私にもギリギリ記憶のある紙人形もキレイに保存してあって、懐かしかった。
自分たちで人形の服を制作していて、そっか本来子供って紙とハサミでいくらでも遊べるのかもな、と思った。
ゲームがあるからゲームをするんよね。
なければしない、というか何かあるもので遊ぶのだろう。
自分達で人形のノートまで作っている芸の細さよ。
細かい作業と言えばもうひとつすごかったのは、カステラハウス。
カステラの木箱を使ったドールハウスだ。たっぷりと時間をかけて作ってある。
本棚の本もひとつひとつ丁寧に作っていて、背表紙に当時の児童書のタイトルが沢山書き込んでまある。こういうの好き〜
ただ高野文子の本だからと漫画を期待していると、がっかりする。
イラストは彼女の作で確かに趣き深いけど、基本は写真と文書で構成された本。
タイトルの「とっておいてはどうですか」は彼女の作品の裏に大人(多分お母さん)の文字で、よくできているので、とっておいてはどうですか。と書かれていた事から取られている。
なんか気品、みたいなものを感じた。
次に読みたい本