瀬川まいこの「そして、バトンは渡された」を読んだ。
本屋大賞受賞し、最近映画化もされた話題作。
私は映画の父親役森宮さんのことを、なぜかずっとムロツヨシが演じていると思い込んでいて、読んでる間中ずっと脳内映像ではムロさんだったのだが、なんと演じているのは田中圭だった。
なんで、ムロさんだと思い込んでいたか、というと多分こっち(映画『マイダディ』)と混乱したんだけど、こちらも血のつながらない父娘の話なので当たらずとも遠からず?
とにかく、脳内ムロさんだった森宮さんが素敵すぎる小説であった。
さて、この話。ものすごく簡単にあらすじを紹介すると「何度も親が変わる女の子のお話」
それだけを聞くと、血のつながらない親子関係の苦労、かと思いきやそうではない。
幼いころ母と死別した優子ちゃんは、父親の再婚でりかさんという新しい母親を得る。
ここで、ふつうはイコール不幸な展開が待っていそうなのだが、りかさんはちがった。
「産んでもいないのに子供が育てられるなんてラッキー」
とばかりに、離婚後も優子ちゃんを引き取る。
そして、再婚、離婚を繰り返しそのたびに優子ちゃんは名字が変わるのだが、いつもそこにはりかさんの深い愛情と優子ちゃんの朗らかさと強さが奇跡のバランスをもって、幸せな家族をつくる。
最後の家族は全く血がつながらない37歳の父親と17歳の女子高生、という一見してなんかエロ小説家のが好みそうな状況になるのだが、父も娘も本当にまっとうな人たちで、汚れたまなざしを受け付けない。
そして、離婚と再婚をくりかえして優子ちゃんを振り回している魔性の女みたいに見えるりかさんのパワフルさよ!
りかさんの原動力は「こども」なんだ。
そして、いきなり女子高生の娘を育てることになった森宮さんの原動力も「こども」
血のつながらない「こども」を幸せにする、それだけが原動力の二人にちょっと恥じ入る。
三人もいる血のつながったこどものためにそこまでやっているのか、私。
少なくとも子供にピアノを弾かせるために再婚する、という発想は出てこない。
いやー、いい話を読んだなぁ。さすが本屋大賞だなぁ。
でも、実際にはおそらくこんな幸せな家族を作るのはむずかしくて、ほとんどは犠牲を強いられるこどもと自分勝手な親という構図になると思うんだよね。
だからこその奇跡、現代版おとぎ話としてみんなが感動するのだろう。
愛の形は恋愛だけじゃないんだよ、というのがわかる。
クリスマス前に見たい映画。
でも、先ほど映画予告編をみたところ、たぶん原作とちょっと違うのかな?
原作には出てこない子役がでてきております。
無条件に人を愛する、人のために生きる姿を垣間見たくなったらぜひ。
自分にはできないけど。