iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に読書録。読み終えた本がこのまま砂のように忘却の彼方に忘れ去られるのが申し訳ないので、書き留める。要は忘れっぽい読者の読書日記。

武士の一分がたてばそれでいい「隠し剣秋風抄」

隠し剣シリーズ第二弾は先ほど上映されていたキムタク主演の映画「武士の一分」の原作であります。
原題は「盲目剣谺返し(こだまがえし)」年配の同僚のうんちくによると、原題のまま映画のタイトルにするのは出版社だか映画会社だかが変に気を回したかららしい。へぇ~へぇ~。

さて内容は、「隠し剣孤影抄」同様に編み出された秘中の秘である剣の技をもって生きながらえたり、逆に破滅したり。
「陽狂剣かげろう」「偏屈剣蟇ノ舌」「好色剣流水」「暗黒剣千鳥」等を含む9編。

「陽狂剣」は許婚を殿様に献上させられた男が「狂ったふりをして、やりすごす」事にするが、段々と自分で演じていたはずの狂気の垣根をこえしまう。とても恐ろしいサイコスリラーとも読めます。

「偏屈剣」は、美人の姉を差し置いてそうではない妹を嫁に望んだ、人からとんでもない偏屈だといわれている男が政争に巻き込まれ暗殺者になる。最後に彼が自分の奥方に「おれは偏屈と呼ばれているが、お前のことが気に入ったから嫁にもらったのだ」と言い残すところがよい。じーんとしました。

そして「盲目剣谺返し」は念頭からキムタクを脳内劇場で割り当てて読んでいたのだが、・・・よかった~私の中でキムタク株急上昇だわ。(なんか違う?)

内容は

毒見役の三村新之丞は、仕事中貝の毒で失明をしてしまう。
妻の加世はどうか家だけは残したいと夫の上司に願い出るが、悪い上司、島村藤弥は加世と関係をせまる。

目が見えないことで他の感覚が鋭く研ぎ澄まされた新之丞は加世の臭いや立ち居振る舞いから不倫を感じ、加世を家から出し島村に果たし状出す・・・

うれしいのはこの話がハッピーエンドで終わること。(あんまり無いような気がする)

また、本文中で「武士の一分」ということばがとても効果的に使われています。

前回に比べ、やや明るい展開(とは呼べないが)、恋愛物語として考えるならハッピーエンド(といえなくも無い)。
ずいぶんカッコが多い文章を書いてしまったが、とてもいい読書をしました。おすすめ!

隠し剣秋風抄
隠し剣秋風抄
posted with 簡単リンクくん at 2007. 2.19
藤沢 周平著
文芸春秋 (2004.6)
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