かなり前に友人におすすされていたのだが、最初の数ページで挫折していた本。
なぜなら、最初っからこどもの死ぬ話だったから。
妙にドライで、そのひどい状況に対してあまり感情を動かさない
主人公のひとり語りが好きになれなかったからでもある。
でも、次第に彼が心に蓋をしている事や(脳の感情を司る一部分をマスキングする)、誰よりも死にたがりなところが、だんだんわかってきて面白くなってきた。
特に、最後は彼が殺してしまう相棒との掛け合いがおもしろい。
なんか、ピザを食べながらバドワイザーを飲み、Netflixを見ながらの、いかにもアメリカっぽいユーモア(私の想像するかぎりの)が繰り広げられる。
そこには我々の知る日常しかないのに、近未来の戦争は恐ろしく残酷だ。
未来の戦争では、兵士はとても貴重な兵站でありメンテナンスを怠らない。
例えば、戦場で人を殺さなければならないときには予め感情に蓋をしておく。
怪我をしても痛みを知覚はできるが感じないようにしておく。
まるで、海外に渡航前にワクチン接種をするように予め、脳の一部に処理を施して置くのだ。
こうして、怪我をしていることは理解しているが痛みに苦しむことはなく、
戦場で幼い子供を殺すことになっても罪悪感を感じることはなく、
心の健康を保ったまま戦う兵士が生まれる。
SFでよかった。実際こんな研究は本当に進んでいそうで怖いが。
人を殺してはだめな理由はなんですか?なんて。
もうだめなもんだダメ。とにかく理由なんかなくダメなんだろうと思う。
自分が殺されたくないから殺さないんだよ、なんて子どもには教えたくないし
というか、ダメなもんはダメじゃダメなのかい?
とにかくいろいろ心を揺すぶられた(けっこう悪い意味でゾワゾワと)読書だった。
この世界観は映画というよりアニメだな、と思ったら案の定アニメ化されていた。
かっこいいし面白いけどマザコンの主人公が失恋をして世界を滅ぼそうとするっていう、まあまあ最低のラストシーンが待っておりますが、多くの人がレビューを書きたくなるような本であることは間違いない。
(というか、ここまで身も蓋もない話ではない。)