畠山丑雄の「叫び」を読んだ。
あらすじに「恋愛政治小説」と書いてあったので、ナンノコッチャ、と思って読み進んでいた。
恋愛小説(ただし、ちょっとクセが強い人たちの)でも、ピュア・ラブかなと思っていたら、クライマックスで度肝を抜かれた。
え~、そんな感じ?
今って、あまり政治的な発言をすると遠巻きにされるけど、この本は政治的なのかなぁ。体制的?
とにかく、危ないところにチョンチョン手を出す、猫の手的な遊びを感じた。
語り手の早野ひかるが、だんだん狂っていくというより、もともと、はたから見たらいわゆる「ヤバい」人なんだと思う。
でも、読者は早野の思考を読まされるので、ユーモアがあっていじらしい独身男性だと思って読み進める。
ところが、だんだん「それはどうだろう」という行動が入ってくる。そこが怖いというよりも、飲み込みづらい。
銅鐸づくりにハマっているところは、まあ、個性的で済むけど、「市民を啓蒙」しようとするあたりから、面白いだけじゃないヤバさがにおってくる。
女の子と万博デートに行きたがるあたりも、極めて真っ当な欲望なんだけど、終わり方、なんじゃこや~!なのである。
うまく言えないけど、恋愛小説と思って読んだら着地点が違った、という感じ。
そして、不思議なことに面白いんだよ。
戦時中の青年と、たびたび妄想の中で交流するのだが、確かに戦中に大陸に渡りお国のために、天皇陛下のために働いていた彼からすれば、そりゃあ、言いたいこともあるだろう。
おかしみのある文章と、「そうであろうな」と思う気持ちが重なるクライマックス。
読後感としては、ドッキリでもないし、なんだろう。不思議。
でも、こんな不思議な気分にさせてくれる読書は、そうないだろう。
【第174回 芥川賞受賞!】
聞いて欲しい人が一人おるんです。「政と聖」(まつりごと)を描く芥川賞受賞作。
早野ひかるは「先生」に打ちのめされ、銅鐸と土地の来歴を学び始める。ここではかつて罌粟栽培と阿片製造が盛んで、満州に渡って「陛下への花束」を編み、紀元2600年記念万博を楽しみにしていた青年がいた。いつしか昭和と令和はつながり、封印されていた声が溢れ出す。
次に読みたい本
こちらも第174回芥川賞の受賞作。
こちらも戦中戦後をとおして描かれる物語。100年前の東京ってこんな感じか。
いまと変わらないものと、全く失ってしまったもの。
