根本聡一郎の「プロパガンダゲーム」を読んだ。
戦争なんて、そんな簡単に賛成するわけがない。そう思っている人ほど、この本はちょっと怖い。
舞台は、電通か博報堂か、どちらとも取れる大手広告代理店「電央堂」。その最終選考まで残った大学生たちに出されたお題が、とんでもないものだった。
宣伝によって「架空の国民を扇動し、戦争に賛成させる」こと。
いわゆるプロパガンダのゲームである。もちろん、激しく不謹慎だ。だが、あくまで架空の国、架空の国民という建て付けで、学生たちは政府チームと革命家チームに分かれ、ただでさえ賢い子たちが知恵を絞って競い合う。
この「プロパガンダゲーム」が恐ろしいのは、学生たちがどんどん本気になっていくところだ。
しばらく前に「かわいいは作れる」として、技術によって可愛くなる方法があることを全世界に解禁した我が国日本だが、要するに「お気持ち=国民の総意」もなんとなく作れてしまうものらしい。
最初は就職試験の一環として、ゲーム感覚で始まったはずなのに、言葉の選び方、見せ方、不安の煽り方、正義の掲げ方によって、モニターたちの気持ちが少しずつ動いていく。そして最終的に、「戦争賛成票」が過半数を超えてしまう。
架空の国の架空の国民とはいえ、そこにいるのは実際のモニター100人である。その人たちの気持ちを、学生たちの宣伝によって「戦争賛成」に持っていってしまったという事実が、まず怖い。
いや、怖いというより、かなり嫌なリアリティがある。
私たちは普段、自分の意見は自分で決めていると思っている。ニュースを見て、SNSを見て、なんとなく世の中の空気を読んで、「これは正しい」「これは許せない」と判断しているつもりだ。でも、その“なんとなく”の部分に、誰かが意図的に手を入れていたらどうだろう。
しかも、このゲームは単なる就職試験にとどまらない。ゲームが終わったあとも、参加した青年たちの将来にじわじわ影を落としていく。最終的に、誰が誰に何をさせようとしているのか。読み進めるほど、「いやいや、さすがにそこまでは……」と思いたいのに、まんざらありえなくもない話で、ぞ~~っとするのだ。
民主主義って、すごく立派な仕組みのようでいて、結局は「全体のお気持ち」で動いてしまう部分がある。そのお気持ちは、案外かんたんに作られる。怒りも、不安も、正義感も、きれいな言葉で包めば人は動いてしまう。
やっぱり広告を仕掛ける人たちって、ここまで考えているのだなぁと思った。もちろん現実の広告マンがみんな戦争を煽っているわけではない。ないのだけれど、人の心を動かす技術というのは、使い方を間違えると本当に危ない。
「プロパガンダゲーム」、作者はどうやらKindleパブリッシング、いわゆる自費出版でこの本を出し、認められどうやらドラマ化、コミカライズまでされている見たい。それはそれで夢が広がる話である。
「君たちには、この戦争を正しいと思わせてほしい。そのための手段は問わない」大手広告代理店「電央堂」の就職試験を勝ちあがった大学生8名。彼らに課された最終選考の課題は、宣伝によって仮想国家の国民を戦争に導けるかどうかを競うゲームだった。勝敗の行方やいかに、そしてこの最終選考の真の目的とは?――先の読めないゲーム展開と衝撃のラストが、宣伝広告の本質、ネット社会における民主主義とはなにかを読者に問いかける。アマゾン電子書籍の人気作を大幅改稿した完全版!
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