iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に忘れっぽい私の読書録。最近はもっぱらAudibleで聞く読書

『万感のおもい』カレー屋で待つ直木賞発表

万城目 学の「万感のおもい」を読んだ。

 

日常はいつの間にか元に戻るのに、あの頃の息苦しさだけは、ふとした文章で簡単によみがえる。

「万感のおもい」は、ちょうどコロナ禍に書かれたエッセイ集である。

 

あの厄災が終わって、かれこれ5年。

いまではすっかり喉元過ぎれば……な感じで生活しているけれど、最近とくに、当時書かれた文章や話をよく見聞きするようになった気がする。皆さん、そう思いません?

 

忘れていたつもりだったのに、読んでいると当時の圧迫感や、じわじわ迫ってくる恐怖が、もう一度引き出しから取り出されるような気持ちになる。

息はできる。でも、なんとなく苦しい。そんな感覚思い出す。

 

ほかにも、あの長編「ヒトコブラクダ層戦争」執筆中の話が面白かった。とくに、砂漠の色を何色にしようか悩む話。

そうか、そりゃそうだ。砂漠は日本にないのだから、日本の伝統色「和色図鑑」にはないよね。

 

そして、何度も直木賞にノミネートされるも選ばれない複雑な気持ちの話も印象に残った。

直木賞の待ち会については、つい先日読んだ村山由佳の「PRIZE」でも描かれていた。フィクションとはいえ、「PRIZE」では各社の担当編集を呼んでパーティ。一方、万城目氏はカレー屋で担当者と二人、カレーを食べながら待ったとのこと。

このあまりの雰囲気の違いよ。

。ニヤニヤせずにいられない。

 

 

「万感のおもい」には、作家としての悩みやコロナ禍の記録だけでなく、家族との話もたくさん詰まっている。

 

とっておきのチョコバーを誰かに食べられて、子どもを叱ったら犯人は奥さんだった話。さらに、とっておきのチョコバーを、今度は本当に息子に食べられて、「美味しくなかったよ」と言われる話。大事なので繰り返すが、とっておきのチョコバーである。

 

京大卒の直木賞作家、あまりにも身近でほほえましい。

 

いつも万城目 学の作品を読むたびに、この人の頭の中はいったい全体どうなっているんだろうと思っていた。鹿がしゃべったり、鴨川でホルモーしたり、プリンセスが豊臣だったりする世界を生み出す人である。きっと脳内に、一般人には見えない京都の地下通路みたいなものがあるに違いない。

 

しかし「万感のおもい」を読んでみると、なんのなんの、そこにいたのはフツーのお父さんだった。

 

仏頂面してへんてこりんな話を書いている万城目学。サイコーだぜ。

 

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万感のおもい (文春文庫)

 

確かな人生の手触りに涙がにじむエッセイ集

笑いあり、涙ありの絶品エッセイ46篇を収録!
「万」エッセイの文庫最新刊。

日々に溢れるたくさんの色
大学生活をおくった京都のこと
生まれ育った大阪のこと
これまで読んできた本
対談で出会ったあの人の話
大切な人との別れ
直木賞受賞までの道のり
作家として過ごす毎日のこと……

出会った人と話し、季節の移ろいを目の当たりにし、日常の中で起きる新鮮な出来事が、たくさんの記憶を色鮮やかに呼び起こす。

――今日も私は「しあわせな気持ち」を求め、仏頂面で執筆中である。

万城目節全開!
ユーモアたっぷり、でもときに切ない。
日常の「面白い」を鋭く切り取った、確かな人生の手触りに満ちる名エッセイ。

直木賞受賞までの道のりを描いた「待ち会戦記」、「直木賞賞金の使い道」、陸上競技選手・田中希実さんと会った日のこと、そしてクイズ番組出演の記録の4篇の名作を新たに収録!

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