稲田 豊史 の「本を読めなくなった人たち―コスパとテキストメディアをめぐる現在形」を読んだ。
私も、「本を読めなくなった人たち」に入るのか……。
結構衝撃的な内容だった。
ショート動画やAIなどが普及し、本を読むことが「コスパが悪い」と捉えられ始めている。
コスパってなんだよ、と思うけど、もはや合理的ではないと若者たちは考えているのだ。
作者は「若者が本を読まなくなった、まったく嘆かわしい!」と嘆いているわけではない。
徹底的な取材により、もしかして「テキストメディア」って前世代の遺物であり、今やもっと「分かりやすく吸収しやすいメディア」があるのに、わざわざ本で情報収集するのは、明らかに「本を読んでいる自分が好き」な人たちが行うちょっとマニアックな行いなのではないか、というのだ。
本を読むことは素晴らしい、と考えられていた時代が続いた。
けれど、それは情報や知識を残したり伝えたりするには、本という形を取らざるを得なかったからだ。
物理的な制限もあるし、今やインターネット上に載っている情報で十分ではないか、と思っている人が一定数いるのである。
私も最初は「いやいや、極論でしょ」と思っていた。
けれど最後まで読んで、改めて思う。
……テキスト、確かにコスパが悪いわ。
確かに最近の本は高い。
働いている大人がそう思うのだから、学生からしたらさらに厳しいだろう。
一方、スマホの中には無料、もしくはサブスクで楽しめるものが溢れかえっている。
しかも、情報収集という観点から見ても、かなり費用対効果が薄い。
ネットで調べたらAIがいい感じにまとめてくれそうなことが、数千円と数時間をかけて、やっと手に入るのだ。
加えて、最近の学生さんは団塊ジュニアの我々が大学生だった頃に比べ、格段に自由に使えるお金が少ないのだそう。
作者はこれを、当時と現在の関東圏の大学生に送る仕送り額の推移から結論づけている。
グラフでは物価は上がっているのに、小遣いに回せるお金は右肩下がりで、ちょっとゾッとした。
これじゃ、私たちが簡単に「最近の若者は本を読まない」なんて批判はできないよ~
作者の話の展開は、ちょっと極論すぎんか?と思うところもあるものの、結構納得できる。
若者が、というより人々が本を読まなくなった理由は、「テキストが情報収集として極めてコスパが悪い」だけではない。
若者たちの間では、もはや読書しているということ自体が「マウンティング」に感じられるのだそうだ。
なので、「毎日読んだ本を上げるブログ」みたいなものは、完全に「本が好きなんじゃなくて、本を読む自分が好きな痛い人」に見えるらしい。
……なんだろう、この気持ち。大いにギャフンって感じ?
いや、私だって「#読書好きさんと繋がりたい」みたいなハッシュタグには、なんとなく反発があったよ!?
だって、繋がった後に何をしたらいいのか分からないし。
実世界でも人見知りなのに、ウェブ上で見ず知らずの人と何を話せばいいのか、まったく分からん。
とにかく、この本によると、もはや読書は「葉巻」や「マニュアル車」のような嗜好品で、お金に余裕のある人が好きでやっていることになりつつあるらしい。
……でも大丈夫、私も最近Audibleしか使ってないんだったわ。
もはや私も「本を読めなくなった人」だったのだ。
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著者による『映画を早送りで観る人たち』の待望の続編!
〈倍速視聴〉から見えたコンテンツ消費における〈コスパ〉〈タイパ〉という欲望は、
読書においてはどのように作用しているのか。
本作では、「本を読めない人たち」への徹底取材をはじめ、
テキスト受容を取り巻く読者と出版社/ウェブメディアの現状をリポートする。
一体「本を読めなくなった人」は何を考えているのか。
2010年代以降、本が読まれないことが当たり前になるなか、
ほとんどフォーカスされてこなかった。
生の声を取材することで、現代社会のメディア状況への考察を深めていく。
【目次】
プロローグ
第1章 ニュースを無料で読む人たち
――無料ウェブメディアの行き詰まり
第2章 本を読まない人たち
――〈わかりみ〉と〈おもしろみ〉
第3章 本と出合えない人たち
――無料抜粋記事と電子書籍の限界
第4章 本屋に行かない人たち
――聖域としての書店
終 章 紙の本に集う人たち
――読者と消費者
次に読みたい本
ちなみに、この人がYoutubeで自著を紹介している動画を見たけど、この本買わなくてもだいたい同じことを言っているなーと思ったので、本当に両刃の剣が鋭すぎて笑えないのである。
