染井 為人 の「黒い糸」を読んだ。
読み終わったあと、タイトルの「黒い糸」って、やっぱりDNAのことだったのかな、としばらく考えてしまった。
運命の赤い糸ならぬ、血のつながりの黒い糸。なんだかイヤな響きである。
「黒い糸」は、シングルマザーの亜紀と、彼女の息子が通う小学校の担任・祐介の二人の視点から、交互に語られていく物語だ。
この二人の視点で読んでいるあいだは、かなり引き込まれた。亜紀の生活のしんどさや、母として踏ん張る感じ。祐介の教師としてのまっすぐさと、どこか危うい優しさ。そのあたりはすごく読みやすく、ぐいぐい進んでいく。
というか、登場人物の中でまともなのは、結局この二人だけだったのではないか。
あとは、サイコパス、ストーカー、薬中、狂信者、モンスターペアレンツ。ヤバい人たちの見本市である。もう少し普通の人も混ぜてくれないと、こちらの感覚が麻痺してくる。たまに出てくる祐介の兄だけは好感が持てたが、たぶん彼は彼でマッドサイエンティスト枠である。まともそうに見える人ほど、実は一番ヤバいのかもしれない。こわい。
ここまで危ない人しか出てこないと、これはミステリなのか、サスペンスなのか、いやむしろホラーなのでは、という気持ちになってくる。
「黒い糸」は終盤に向かって、畳み掛けるように話が転がっていく。その勢いはたしかにある。あるのだけど、このエンディングは好き嫌いが分かれそうだなと思った。
個人的には、もう少し犯人のダークサイドを前半からチラ見せしてほしかった。
意外な犯人ではある。そこは間違いない。ただ、こちらとしては「うわー、やられた!」というドンデン返しの快感よりも、何だがひどく傷つけられた気分。
やっぱり、そんな夢見たいな話はなかったか。
伏線や匂わせが少なすぎるというか、見せ方が後半すぎるというか。フォトショップで加工した心霊写真を見せられたような残念感がある。
もちろん、最後まで楽しく読めた。一気に駆け抜けるような読書だったとも言える。
ただ、ミステリとしての気持ちよさを求めると、少し物足りなさが残る。
逆に、ホラーっぽいミステリが読みたい人には刺さると思う。
「黒い糸」というタイトルどおり、目には見えない何かにじわじわ引っ張られていくような一冊だった。
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結婚アドバイザーを務めるシングルマザーの亜紀は、
クレーマー会員とトラブルを起こして以来、悪質な嫌がらせに苦しんでいた。
息子が通う小学校ではクラスメイトが誘拐される。
担任の祐介は対応に追われる中、
クラスの秀才・莉世から推理を聞かされる――「あの女ならやりかねない」。
その後莉世も何者かに襲われ意識不明に。
亜紀と祐介を追い詰める異常犯罪の数々。
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『悪い夏』の鬼才が現代社会の不条理とタブーに真っ向から挑む、戦慄ダークサスペンス。
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