村田沙耶香の「消滅世界」を読んだ。
生命の本能のタブーから目をそらさない不穏な衝撃作。
主人公「雨音(あまね)」からみた、あり得たかも知れないもう一つの日本の物語。
もし、人工授精が発達して行くとどうなるか?
人間たちは、子どもを作ることはすべて医療期間に任せ、夫婦間での性行為は「家族と」そんな事をするなんてと、最も忌むべき近親相姦と言われるようになる。
だが、雨音の母は世間の常識と言われる事に背いて、昔ながらの方法で天音を受胎し出産した女性だ。
この物語では、一人だけ私たちと同じ感覚の正気を保った彼女は小説の中では「狂った」存在として描かれる。
雨音はそんな母から呪詛の如く「正しい性教育」を受けるのだが、母親へは反発しつつも、性愛に対して強い執着をもち成長する。
徐々に社会から「セックス」が消滅していく中、あるきっかけで彼女は「エデン計画」のエリアに移住する。最も彼女の思想からかけ離れた実験が行われているエリアである。
そこでは街中のみんなが「おかあさん」であり、ランダムに選ばれた人の卵子と精子を、これまたランダムに選ばれた人が妊娠・出産する。
産まれたこどもはみな「こどもちゃん」とよばれ、センターというところで集団で育てられる。
同じ髪型、同じ表情のこどもちゃんを、街中の大人達は「おかあさん」として可愛がる。
そこにはなぜか「おとうさん」はいない。男の人も「おかあさん」だ。
雨音はこの街の薄気味悪さを感じつつも、徐々にそまっていきついにはみんなの共有のこどもをかわいいと思うようになる。
それなのに、嗚呼それなのに。
性的な物を排除して作られた「清らかな」エデンの世界を雨音は壊す。しかも、その世界を肯定しつつ自ら汚すのだから始末が悪い。
最期は結構衝撃的。うへぇ。・・・
でもテキストだけで人をこんな気持にさせるなんて、この人やっぱりヤバいわ。
レベル99でも感じたけど、夫婦とはなにか、性愛とはなにかについて一切手を緩めず描かれている。
この人、自分が女性であることに怒りを感じているんじゃないのか?
作品全体にうっすら「狂信」というイメージが付いて回る人である。
人工授精で、子供を産むことが常識となった世界。夫婦間の性行為は「近親相姦」とタブー視され、やがて世界から「セックス」も「家族」も消えていく……日本の未来を予言する芥川賞作家の圧倒的衝撃作。
次に読みたい本
