iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に忘れっぽい私の読書録。最近はもっぱらAudibleで聞く読書

『M資金 欲望の地下資産』実在しないはずの金に人はなぜ狂うのか

藤原 良の「M資金 欲望の地下資産」を読んだ。

 

まるでモキュメンタリーホラーのような表紙である。タイトルも「M資金 欲望の地下資産」なんて、もうそのワードだけで一本小説が書けそうなケレン味がある。

 

ところが、これがフィクションではなくノンフィクションなのだから、びっくりしちゃう。

 

 

そもそもM資金とは、戦後の日本でGHQが隠匿・管理していたとされる謎の巨額資金を指す言葉らしい。しかも本書では、その正体が「実在しない秘密資金」として扱われている。

 

いや、実在しないって、そんなにきっぱり言っていいのか? と勘繰りたくなるほどこの話にはなにやら惹かれるものがある。

実際、M資金という名前だけが独り歩きし、それを餌にした詐欺事件が山ほど起きてきたというのだから驚く。私は全然知らなかった。

 

 

しかも、その手の詐欺は終戦直後の混乱期だけの話ではない。2000年代に入ってからも、かなり巨額の詐欺が行われているというのがまた嫌なリアルさである。昔の怪談ではなく、わりと最近まで現役の怪談なのだ。

 

手口もじつに幅広い。政府公認の融資が受けられるという話から、元首相夫人のダイヤモンドを買わないかという話、果ては海外に眠るM資金の金塊を運ぶための準備金を貸してほしいという話まである。合法すれすれから完全に非合法まで、ラインナップが妙に豊富だ。詐欺の見本市。

 

やっかいなのは、このM資金にトレジャーハンティング的なロマンを見いだす人がかなりいることだろう。ただの金儲け話ではなく、「もしかしたら本当にあるかもしれない宝」を追う感覚が混ざるせいで、被害者の側も単純な強欲だけでは片付かない。「欲を出した人」と同時に、「夢に賭けた人」でもあるのだ。このあたりが、「M資金 欲望の地下資産」をただの詐欺ルポで終わらせていない。

 

しかも本書、前半から実在の被害者名がかなりバンバン出てくるので少しぎょっとした。さらに実際の詐欺グループへのインタビューまで入っていて、詐欺師たちが実にいけしゃあしゃあと嘯くのである。いや、捕まってないんだよね? そんな相手によく取材したな、とそっちにもひやひやした。かなりアンダーグラウンドに踏み込んでいる。

 

ただ、その一方で、この作者は加害者だけでなく被害者に対してもなかなか容赦がない。ノンフィクションなのに、書き手の感情がわりと乗っているのである。そこは好みが分かれそうだが、私はむしろその冷たさ込みで印象に残った。

 

M資金という得体の知れない幻に、人はなぜここまで振り回されるのか。「M資金 欲望の地下資産」は、その馬鹿馬鹿しさとそれに立派な紳士たちが引っかかる怖さ、そして妙なロマンまでを一緒くたに見せてくる一冊だった。

 

 

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M資金 欲望の地下資産

 

「私達のM資金は本物です」
「やっぱりあれはあったんですね…」
昭和から次々と大企業経営者たちが飲み込まれてきた「M資金詐欺」。
令和にもなお黒く輝き続ける“幻”の正体を追う。

[目次]
第1章 M資金の誕生
第2章 令和のM資金詐欺
第3章 M資金を操る詐欺師たち
第4章 M資金に群がる経済人たち
最終章 M資金は増殖する

次に読みたい本

 

ペテンに踊る M資金の魔力に憑かれた経営者たち