iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に忘れっぽい私の読書録。最近はもっぱらAudibleで聞く読書

『カフェーの帰り道』100年前の私たちがつないだバトン

嶋津 輝の「カフェーの帰り道」を読んだ。

 

読後、しみじみと幸せな気持ちになる本がある。「カフェーの帰り道」はまさにそういう一冊だった。

 

派手な事件はない。100年前の東京・上野の一軒のカフェーを舞台に、そこで働いた女給たちの人生を静かに、けれど確かな熱をもって描いていく。

 

読み終わるころには、ひょっとしてまだこのカフェ「西行」あるかも。と探しに行きたくなる。長い時間の流れを一緒に歩いてきたような気持ち。

 

「カフェーの帰り道」で描かれるのは、戦前、戦中、戦後をまたいで働く女たちの姿である。戦前の女性たちの働きぶりは本当に生き生きとしていて、したたかで、頼もしい。いまの感覚で読むと厳しすぎる時代なのに、その中で笑い、恋をし、働き、自分の持ち場を守っている。頭が下がるとはこういうことかと思った。

 

一方で、戦争が近づき、時代がきな臭くなっていくくだりはやはりつらい。戦中のエピソードには思わず涙してしまった。長い戦争のあいだ、残された女たちはどんな気持ちで毎日をやり過ごしていたのだろう。恋人未満のまま引き裂かれてしまった関係も、きっと少なくなかったはずだ。結婚相手ならまだしも、名前のつかない関係ほど、待つ側は気持ちの置き場がない。生きて帰るのかどうかすら分からないまま、ただ日々だけが過ぎていく。その重さを思うと胸が詰まる。

 

読んでいて特に印象に残ったのが、戦前には女性に「28歳定年」なるものがあったという話だ。なんとも露骨な仕組みである。

 

若い女性でなければ働ける場所がないということは、要するに女ひとりで生きていく道がほぼないということだろう。

 

そんな社会で働き、次の世代に何かを手渡してきた人たちがいた。その積み重ねの上に、今の自分たちが立っているのだと思うと、軽々しく「昔はよかった」なんて言えないよね。

 

私が就職した時代も、男女の雇用機会が本当に平等だったかと言われると怪しい。

いま思えば、あれは残念だったなということもいくつかある。でも、それでも少しずつ状況はよくなってきたのだと思いたい。

 

そして次の世代には、少なくとも「平等である」と信じて就職活動をしてほしい。

その土台は、偉い誰かが急に与えてくれたものではない。「カフェーの帰り道」に出てくるような、市井で働いていた無名の人たちが、よりよくあろうとして生きた結果なのだと思う。

 

ほんの二、三世代前のおばあちゃんやひいおばあちゃんたちも、私たちと同じように笑って、恋をして、働いていた。私も「未来のわたしたち」によりよいバトンを渡して上げたい。

 

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カフェーの帰り道

【第174回直木賞受賞作】
東京・上野のカフェーで女給として働いた、
“百年前のわたしたちの物語”。

強くたおやかに生きる女性たちが、
みんな、みんな、愛おしい。
――原田ひ香さん絶賛

時代を映す鏡であった仕事「女給」を通し、
大正から昭和を生きた市井の女性の人生を描き出す。
『襷がけの二人』著者、心ふるえる最新作。

東京・上野の片隅にある、あまり流行(はや)っていない「カフェー西行」。食堂や喫茶も兼ねた近隣住民の憩いの場には、客をもてなす個性豊かな女給がいた。竹久夢二風の化粧で注目を集めるタイ子、小説修業が上手くいかず焦るセイ、嘘つきだが面倒見のいい美登里を、大胆な嘘で驚かせる年上の新米・園子。彼女たちは「西行」で朗らかに働き、それぞれの道を見つけて去って行ったが……。大正から昭和にかけ、女給として働いた“百年前のわたしたちの物語”。

次に読みたい本

初読みの作家さんしかも男性だと勝手に思い込んでいましたが「襷掛けの二人」の人だった。こちらも良かった!

 

 

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