津村 記久子 の「現代生活独習ノート」を読んだ。
津村記久子には独特の彼女だけが出せるワールドというものがあると思う。
「現代生活独習ノート」は、そんな“極めてやる気のない人々”が八人も出てくる短編集なのだが、どの話もほんのり不思議で、読んでいると妙に元気が出る。大笑いするというより、ハハッと笑って、まあ私もぼちぼちやるか、くらいの気持ちになる。
最初に収録されている「レコーダー定置網漁」が、私は特に面白かった。
ーーーーーリフレッシュ休暇をもらったが、もはや私にはリフレッシュする気力自体が残っていなかったのだった。
冒頭でもう持っていかれる。すごい。
採用が決まった学生のSNSをチェックする仕事に疲れ果て、何もする気が起きない主人公。
唯一の楽しみは自動録画していた「刑事コロンボ傑作選」を見ることだったのに、それも終わってしまう。
そこでレコーダーが勝手に録り続けていた別の深夜番組群が登場するわけだが、これがまた全部ちょっと変なのである。(まちがって取った番組を消す気力すらないのだ)
死ぬほどやる気がなくてもできる自炊料理とか、おしゃれで充実したライフスタイル相談を妙に偏った意見で一蹴するとか、どれも「ありそうで、でもさすがにここまでではない」番組ばかり。
結局、ものすごい事件が起こるわけではない。でも、休暇の終わりには主人公がちゃんと少し回復していそうな気がするのだ。読んでいるこちらも、なんとなく呼吸がしやすくなる。
ほかにも、少しだけSFっぽい話があったり、母と娘の冷蔵庫戦争があったり、結局人って怖いよなともう話があったりして、短編集としてのバラエティも楽しい。
頼むとロバが配達と集荷をしてくれるサービスが出てくる「現代生活手帖」もよかった。この世界には、余ったうどん玉とちくわ天を交換できるマッチングサービスや、いらないものをこっそり捨ててくれるサービスまであってマジ「便利」なのである。
便利で呑気なのである。たまらんなぁ。
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「リフレッシュ休暇をもらったが、もはや私にはリフレッシュする気力自体が残っていなかったのだった。」
入社希望の学生のSNSチェックに疲れ果てた会社員。代々続く母と娘の台所戦争。遅れても許せてしまうことが美点のロバによる配送サービス……。膨大な情報の摂取と判断に疲れてしまった現代人の生活に寄り添うやさしさと、明日を生きるための元気をくれるユーモア満載! 味気ない日々をゆるゆると肯定し、現代人の張りつめた心をゆるめる短編集。
「もう何もしたくないという切実な本音に寄り添ってくれる稀有な小説」――金原ひとみ
本屋大賞2位『水車小屋のネネ』、Xで何度もバズった芥川賞受賞作『ポトスライムの舟』など、
書店&SNSで話題を集める著者による、「脱力系」日常譚の真骨頂!
次に読みたい本
こちらも、やる気のなさそうな女性が主人公のお仕事小説。
この本は、さわやかさ満点でちょっと方向が違うけど「恩送り」についての考え方が良くて、すべての人が読んだらいいのに!って思う。
津村記久子は間違いないかも知れない。
