髙田郁の「銀二貫」を読んだ。
寒天問屋という馴染みのないお店が舞台の物語。
ゼラチンに席巻されている現代の日本ではとんと口にすることの少ない寒天。
そう言えば、棒寒天を煮溶かして何かを作ったことなんて昭和生まれの私ですらない。
今はパウダー寒天なんて便利なものもあるしね。
さて物語は、寒天問屋の和助に銀二貫(現代で言うとどのくらいだろう?1千万円くらいかしら?)で買われた松吉の半世紀。
「買った」と聞くと人身売買っぽいけど、仇討ち事件に巻き込まれ父とともに殺されかけていたところを救うために、和助が咄嗟に「その仇討ち買います」と銀二貫という大金を渡したというもの。
しかし、そのお金は余裕があるお金ではなく火事で焼失した天満宮再建のためなんとか都合をつけたお金だったため、信心の篤い番頭の善助は大激怒、原因となった松吉に事ある毎に辛く当たるのであった。
少年が、武士の子でありながらも「買ってくれた」和助への恩を忘れずに商いに打ち込み、糸寒天を開発しその糸寒天の活用法として、羊羹を産み出す物語。
たかが寒天と思うなかれ、その開発はまるでプロジェクトXのような開発秘話が隠れている。偶然から産まれるドラマと熱い思い。
何事ににも一生懸命な松吉は、恋心を抱いた少女、真帆を想いながらも、亡くなった彼女の父が話していた「里芋すら固められる腰のある寒天」を作るため邁進する。
あっといまに2,3年過ぎていくので、ドキドキする。
わきを固める登場人物たちもすべてが「愛すべき」人たちで、番頭さんの善助(実はいいキャラ)や丁稚仲間の梅吉など、本当に御縁に守られている事がわかる、ザ時代小説という感じ。
読後感爽やかで大いによし。
調べてみたら、ドラマ化に漫画化そして宝塚歌劇団による舞台化までされていた。
たくさんの人の心を掴んだからに他ならない。
大坂天満の寒天問屋「井川屋」店主の和助は、天満宮再建のために寄進するはずだった銀二貫で仇討ちを買い、ひとりの少年の命を救う。
以後、少年は「松吉」と名を改め、士分を捨てて井川屋の丁稚として生きることになる。
商家の厳しい仕込みに耐える中で、良きひとびととの出会いがあり、松吉は寒天への愛着を深めていく。
恋を恋と知らぬまま、ひとりの女性を想い続けて、彼女との或る約束を果たすべく、精進を重ねる松吉だが……。
難儀に耐え、慎ましく生きる市井のひとびとの間を、銀二貫が巡り巡って幸福へと導いていく。
髙田郁の紡ぎだす至福の物語、ここに登場!
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大店のお嬢さんの事を「いとはん」と呼ぶのは細雪を思い出すわ。

