本谷有希子 の「異類婚姻譚 」を読んだ。
怖いようなとぼけたような不思議なお話。
犬は飼い主に似てくるって言うけど、一緒に暮らして同じような生活をしていれば夫婦も似てくるのだろうか。いや、似るにしても限度ってもんがある。
主人公のさんちゃんは、たぶん自分のことを「幸せ寄り」と思っている。そこがまず怖い。相手の夫がかなりヤバいやつで、いわゆるモラハラ夫である。
面倒くさいことは何一つしないと公言して憚らぬ彼は最初こそちょっとかわいげが合ったが読み勧めるに従って嫌悪感が湧いてくる。
しかもその顔が、さんちゃんの前で緊張感を失い、「人間でいることすら辞め」ていく。ここ、比喩じゃないのよ(多分)本当に目や鼻がゆるゆると動いているのだ。
他人である夫と自分の境界が曖昧になっていく間隔はわからないでもない。だが、これは愛ではないと思う。
一人の人間同士が互いに対するリスペクト、本気でぶつかる真剣さが足りないとこうなるのかなぁと思う。日本人には苦手分野だよなぁ。
言い返すタイミングを逃し、丸く収める癖がつき、気づけば「まあ、こんなもんか」で日々を回してしまう。取り得ず回転して進んでいるものは今更止めるほうが難しいのだ。
あんなに「人間のふりをしたなにか」と思いつつも最終的には混ざり合い、入れ替わり、そしてまた分離する。
最後には花と彼女だけが残るのだが、これってひょっとして二人が一つになったってことなのかな?あるいは、片方が片方を食べてしまった、と言い換えても成立しそうである。体温のない寓話。だから余計に、背中のあたりがぞわっとする。
表題作含め、2つの短編が収録されているが、最期に収録されていた「藁の夫」という話もなかなかに怖くて不思議で衝撃的な作品だった。
久々によくこんな事考えつくなと作者の脳内を除いてみたくなる。
「異類婚姻譚」という言葉はどうしても悲恋とか神秘的、タブーのイメージがつきまとうからか、現代でもたくさん引用再生産されているみたいで、検索にもたくさん引っかかってくる。面白い。
そうそう、猫や犬がよくでてくるが途中で猫が捨てられる場面が出てくるので猫好きさんには要注意だ。
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子供もなく職にも就かず、安楽な結婚生活を送る専業主婦の私は、ある日、自分の顔が夫の顔とそっくりになっていることに気付く。「俺は家では何も考えたくない男だ。」と宣言する夫は大量の揚げものづくりに熱中し、いつの間にか夫婦の輪郭が混じりあって…。「夫婦」という形式への違和を軽妙洒脱に描いた表題作が第154回芥川賞受賞! 自由奔放な想像力で日常を異化する傑作短編集。
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一番有名なのは安倍晴明の母親が狐だったっていう話よね。
能力が突出した人物が人間離れした、と言いたいがためのエピソードにも思えるけど、
昔の人は、狐も外側がキツネの形の人間と思っていたのかもしれない。

