iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に忘れっぽい私の読書録。最近はもっぱらAudibleで聞く読書

「ニッターズハイ」お金じゃ買えない物を愛でる

猫田 ゆかりの「ニッターズハイ!」を読んだ。

 

キラキラお目目の男子高校生たちが織りなすが編み物を中心にした青春物語。

 

正直に言うと、男の子が編み物?と一瞬思ってしまった自分がいる。頭では「男のくせに」「女のくせに」なんて言葉はダメだと分かっているのに、無意識に引っかかってしまう。その瞬間、自分がいかにパターナリズムにどっぷり浸かっているかを突きつけられ

て、少し居心地が悪くなった。

 

物語冒頭、表紙の男の子と“編み物王子”が出会う場面で、「男が編み物なんて」という発言が飛び出し、王子が本気で怒る。このシーンが実にいい。説教くさくならず、感情としての怒りがきちんと描かれていて、だからこそこちらも「しまった」と思わされる。

 

 

なぜ彼が編み物王子と呼ばれるほど編み物にのめり込んだのか。その理由は第1巻で明かされるのだが、これがもう、ずるい。静かで、優しくて、胸を打つ。

 

気づいたら目頭が熱くなっていて、編み物という題材を通して、ここまで感情を揺さぶられるとは思っていなかった。

 

ちなみに、この漫画を読めば編み物が上達するかというと、そういうわけではない。基本的な技術説明はあるが、ハウツー本ではないのでそこは注意。

 

ただ、手芸部の先輩二人がまた良いキャラで、技術よりも「編む時間の楽しさ」や「没頭する幸福」を体現してくれる存在だ。読んでいて純粋に楽しい。

 

タイトルの『ニッターズハイ!』は、いわばランナーズハイの編み物版。編むことに集中しすぎて、他のことがどうでもよくなる、あの感じ。

 

今の時代、たいていの物は作るより買った方が安い。それでも、あえて自分の手で作る。その行為自体に楽しみと贅沢がある。それが手芸であり、この作品の芯にある価値観だと思う。高校生にしてそこに気づいている手芸部の部長、やるな。

 

『ニッターズハイ!』は、編み物漫画というより、「好きなことに夢中になること」を肯定する青春漫画である。

 

編み物は今後するかどうかわからない自分だが、なんか作ることはメンタルにもよさそう。

 

これから、ゴツい先生が編み物をするような気配なので楽しみ。

 

ニッターズハイ!1 (角川コミックス・エース)

中学時代は全国も目指せる優秀な陸上選手だったものの、怪我により競技から遠ざかってしまった浜仲健斗。
失意のまま高校に入学してすぐ、健斗は手芸部へと勧誘されるが、「男が手芸なんて変だし」と心にもないことを言ってしまう。
ところがその場に偶然居合わせた「編み物王子」と噂される男子生徒との出会いが、健斗の高校生活を大きく変えることに――。

糸を編んで友情をはぐくむ、感涙必至のクラフトライフストーリー。

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