iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に忘れっぽい私の読書録。最近はもっぱらAudibleで聞く読書

『営繕かるかや怪異譚』大分・中津を舞台にした優しい怪談

小野不由美の「営繕かるかや怪異譚」を読んだ。

 

心霊譚なのに、読み終わってほっとする。そんな不思議な味わいのある作品だ。「営繕かるかや怪異譚」は、怪談という枠を超えて、誰かの暮らしに寄り添う物語として胸に残る。特に、営繕屋・尾端の存在感がとても良い。

 

舞台は、どうやら作者・小野不由美の出身地である大分県中津市をモデルにした古い城下町。

そこには、長く続く土地の因縁や、根深い因習、人間関係のこじれなど、目には見えない澱のようなものが渦巻いている。けれど、尾端が関わることで、そこに住む人々の暮らしがほんの数人ずつの単位かもしれないけど、確かに癒されていくのだ。

 

尾端は、「そういうことが得意な人」として口コミで紹介される。だが、彼はいわゆる霊能者ではない。お祓いや除霊といった派手なパフォーマンスは一切せず、ただ、住まいの修繕を淡々と行う。それも、極めて常識的で、理にかなった工事ばかりだ。しかしその修繕が終わると、なぜか怪異が収まり、住人の心に静けさが戻ってくる。

 

彼の理想は「住む家を好きでいてほしい」という、ただそれだけ。その誠実さと真っ直ぐさには、思わず頭が下がる。

 

いかなる怪異が相手でも、尾端は感情をあらわにせず、過剰に騒ぐこともなく、あくまで「営繕屋」として職務を全うする。その姿がなんともかっこいい。

 

「営繕かるかや怪異譚」というタイトルにふさわしく、物語には確かに怪異が登場する。でも、そこにあるのは怖さよりも、人の暮らしに潜む切なさや、孤独や、後悔といった感情だ。そして、尾端のような人がそっと手を差し伸べることで、そうした感情が少しずつほどけていく。

 

この「営繕かるかや怪異譚」は、怪談でありながら、優しさと希望を感じさせる稀有な作品である。やっぱうまいな~~

 

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[3巻] 営繕かるかや怪異譚 その参: (KADOKAWA)

 

建物で起こる怪異を解くため、営繕屋は死者に思いを巡らせる。

怖ろしくも美しい。哀しくも愛おしい――。これぞ怪談文芸の最高峰!シリーズ第3弾。建物にまつわる怪現象を解決するため、営繕屋・尾端は死者に想いを巡らせ、家屋に宿る気持ちを鮮やかに掬いあげる。
恐怖と郷愁を精緻に描いた至極のエンターテインメント。全6編収録。

待ち伏せの岩」
渓谷で起きた水難事故で若者が亡くなる。彼は事故の直前、崖上に建つ洋館の窓から若い女に手招きされていた。一方、洋館に住む多実は、窓の外に妖しい人影を見る。
「火焔」
イビリに耐えて長年介護してきた順子には、死後も姑の罵詈雑言が聞こえる。幻聴だと思っても、姑の携帯番号から着信を受け、誰もいない家の階段で肩をつかまれ……。
「歪む家」
温かい家庭を知らない弥生は、幸せな家族を人形で再現しようとする。しかしドールハウスを作り込むうちに些細なきっかけで「歪み」が生じ、やがて異変が起こる。
「誰が袖」
典利は戸建てを新築し、第一子の出産を控えた妻と母親が暮らしている。以前に住んでいた屋敷には幽霊がいた。当時を思い返した典利はふと、あることに気付く。
「骸の浜」
河口付近の家にひとりで暮らす真琴。荒れ果てた庭の向こうには、低い垣根越しに海が見える。この街の沖で水難に遭った死体は、靄と共にこの庭にやってくるのだ。
「茨姫」
死んだ姉を偏愛していた母親が他界し、響子にとって辛い思い出が募る実家が残った。荒れ果てた家を整理するため、ツルバラで覆われた庭の小屋に入ると……。

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