オカヤイヅミの「ものするひと」を読んだ。
純文学って、どこか遠い世界の話のようで、そもそも書いてる人のこともよく分からない。じゃあ、その「純文学作家の日常」を描いた漫画って、どんなものになるんだろう?そんな興味をくすぐられるのが、「ものするひと」だ。
主人公は、ぼんやりした印象の大柄な男性。見た目は穏やかで、特別変わったところもない。でも、この人、実は「書くことに命をかけている」作家である。「ものするひと」というタイトルがぴったりな、そういう人。
とはいえ、文学だけでは食べていけないので、警備員のバイトをして生活を支えている。仕事帰りにコンビニで晩ごはんを買って帰る姿は、ごく普通の日常そのものだ。「純文学作家」と聞いて想像するような浮世離れした感じは一切ない。けれど、だからこそ、リアルで面白い。
この「ものするひと」の面白さは、大きな事件もサスペンスもないところにある。静かで淡々とした生活の中に、「書く」という営みが確かに存在していて、それがじわじわと心に残るのだ。たとえば、酒の席で始まる遊びが広辞苑を使った言葉遊びだったりする。ああ、こういうところに「小説家」っぽさが滲むんだなと思わされる。
作中で描かれる主人公の創作への向き合い方もいい。書くことを「仕事」として淡々と続ける姿勢が、かっこつけず、でも誠実で、ぐっとくる。派手な作風ではなくても、定期的に作品を世に送り出す。そんな作家の佇まいに、静かな力強さを感じる。
全体に力の抜けた線で描かれていて、それがまたいい。装丁も含めて、どこか洗練されていておしゃれなのだ。日々を生きる人たちの、小さな美しさを切り取るような一冊。ちょっと疲れているときに読むと、私もがんばろってなりそう。
「ものするひと」は、文学の世界が少し遠く感じる人にこそおすすめしたい。読んでみると、「純文学作家って、案外自分たちとそう変わらない日常を生きてるんだな」と思える。そこからまた、文学そのものへの距離も少し縮まる気がする。
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力を抜いたラインがおしゃれな一冊。
柴崎友香(作家)「生活と、書くこと。世界と、言葉で遊ぶこと。絡みあって、隙間があって、移り変わっていく。
ひそやかに楽しくて、ひりひりと幸福で、ずっと読んでいたい」
姫乃たま(地下アイドル)「ああ、『滋味掬すべき作品』ってこれのことだったんだ」
雑誌の新人賞を受賞後、警備員のバイトをしながら、小説を書いている杉浦紺(30)。
“先生”でも“天才”でもない、若き純文作家の日常をのぞいてみませんか?
◎巻末対談 「ものするひとたちのリアリティ」 滝口悠生(作家)×オカヤイヅミ
もの・する【物する】ある動作をする。ある物事を行う。「言う」「食べる」「書く」など種々の動作を湾曲にいう語。(『広辞苑』第七版より)
綿矢りさ、朝井リョウなどの人気作家15人に、理想の「最期の晩餐」を聞いた話題作
『おあとがよろしいようで』のオカヤイヅミ、初のオリジナル長編作。
次に読みたい本
こちらは作家にの最期の晩ご飯を聞いたコミックエッセイとのこと。
人生の最期に何を食べるかという質問に作家先生たちがこたえている。
私は今のところサーモンの刺し身。

