ニシダの「不器用で」を読んだ。
お笑いコンビ「ラランド」のニシダによる小説。
知ってるみたいに書いたが、知らなかったので先ほど調べたのだ。
大学のサークルで結成された男女二人組のアマチュア(!)コンビながら、M-1準決勝まで進んだという異色の経歴の持ち主だという。ニシダはその男性の方で、確か女性の方は企業に勤めながら芸人活動をしているということで話題になっていた記憶がある。
さて、この小説芸人だから「おもしろい」かというと全然そんなことはない。
悪い意味ではなく、芸人らしいサービス精神に満ちた“おもしろさ”はあえて封じられ、どこまでも誠実に、静かに、真面目に純文学をしている。
物語はすべて一人称の語りで構成されており、語り手の年齢や環境が少しずつ変化していく。成長譚のような趣もありながら、どのエピソードにも共通して流れるのは、「不器用さ」だ。タイトルにもなっている『不器用で』はまさにこの作品の軸であり、登場人物たちは、何かをうまくできず、誰かとうまくやれず、それでもなんとか生きようともがいている。
この“もがき”が、決して大げさな悲劇ではなく、どこにでもいそうな人間たちの日常の中に丁寧に描かれている点がいい。なかには、決して「いい人」とは言えないキャラクターもいる。不器用=善人、ではないという、リアルな人間描写が切ない。
ニシダ自身がこれまでどんな人生を歩んできたのかは知らないが、ひょっとしたら、自身の内面を投影した部分もあるのかもしれない。芸人としての顔とは違う、一人の書き手としての誠実な姿勢が、文章の端々から伝わってくる。
『不器用で』は、芸人が書いたから読んでみようという軽い気持ちで手に取ってもいい。でも、読み終わる頃には、「芸人が書いた」ことより、「ニシダという作家が書いた」という視点で、じわじわと作品の余韻が残るのではないかと思う。
うーん、褒めすぎたかな?
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鬱屈した日常を送るすべての人に突き刺さる、ラランド・ニシダの初小説!
年間100 冊を読破、無類の読書好きとして知られるニシダがついに小説を執筆。
繊細な観察眼と表現力が光る珠玉の5篇。
【収録作品】
「遺影」
じゃあユウシはアミの遺影を作る担当な――。中学1年の夏休み、ユウシはクラスでいじめられている女子の遺影を作らなくてはいけなくなった。
貧しい親のもとに生まれてきたアミと僕とは同じタイプの人間なのに……。そう思いながらも、ユウシは遺影を手作りし始める。
「アクアリウム」
僕の所属する生物部の活動は、市販のシラス干しの中からシラス以外の干涸びた生物を探すだけ。
退屈で無駄な作業だと思いつつ、他にやりたいこともない。同級生の波多野を見下すことで、僕はかろうじてプライドを保っている。
だがその夏、海釣りに行った僕と波多野は衝撃的な経験をする。
「焼け石」
アルバイト先のスーパー銭湯で、男性用のサウナの清掃をすることになった。
大学の課題や就職活動で忙しいわたしを社員が気遣って、休憩時間の多いサウナ室担当にしてくれたらしいのだが、新入りのアルバイト・滝くんは、女性にやらせるのはおかしいと直訴したらしい。
裸の男性が嫌でも目に入る職場にはもう慣れた、ありがた迷惑だと思っていたわたしだったが――。
「テトロドトキシン」
生きる意義も目的も見出せないまま27歳になり、マッチングアプリで経験人数を増やすだけの日々をおくる僕は、虫歯に繁殖した細菌が脳や臓器を冒すと知って、虫歯を治さないという「消極的自死」を選んでいる。
ふと気が向いて参加した高校の同窓会に、趣味で辞書をつくっているという咲子がやってきた。
「濡れ鼠」
12歳年下の恋人・実里に、余裕を持って接していたはずの史学科准教授のわたし。
同じ大学の事務員だった彼女がバーで働き始めてから、なにかがおかしくなってしまった。
ある朝、実里が帰宅していないことに気が付いたわたしは動転してしまう。
次に読みたい本
言葉を真剣に考える人達は、文学にもなじみが深いのかもしれない。

