【広瀬すず主演で映画化! カンヌ国際映画祭でも話題沸騰の映画化原作 9月5日(金)全国ロードショー】のカズオ・イシグロの「遠い山なみの光」を読んだ。
「え、これで終わり?」と、思わず声が出た。全てが解き明かされるわけではない、むしろ多くはぼんやりとした薄墨の中に沈んでいく。そんな終わり方。
予習をしないと太刀打ちできない気がして、実は読む前に、いくつかレビューをチェックしていた。
「わからない」「難解すぎる」といった感想が多く、どんだけ難解なのか恐れおののきながら読み始めてすぐにその肩の力は抜けた。
語り口は驚くほど穏やかで読みやすい。現代と過去を行き来する語りもミステリオタクであれば慣れ親しんだ構成。むしろ、読むのがやめられない。
ただ、長崎時代の悦子が不意に「何度も同じことを」語るのである。
これは「わからない」そして「怖い」。
舞台は、戦後の長崎。主人公・悦子は、かつて日本で過ごした日々を、英国での生活の中で静かに回想する。友人・佐知子との交流、佐知子の娘・万里子の奇妙な行動、そして繰り返し登場する“縄”や“ひも”のイメージ——これらが、言葉にならない感情とともに読者の胸に降り積もっていく。
悦子がなぜ日本を離れたのか、佐知子の薄笑いの裏にあるものは何か、なぜ彼女は万里子のためにすべてを投げ打つような事を言ったのか。万里子はどうなった?真理子は景子なのか?
——答えは与えられない。
そして、読み終えてからまたレビューを巡る。
「悦子と佐知子は同一人物ではないか?」という考察を見つけて、なるほどと唸る。
確かに、二人の境遇はあまりに重なりすぎている。だとすれば、語られなかったことの全てが、少しずつ形を持ち始めるような気がしてくる。
そう、この作品は「遠い山なみの光」のように、くっきりとは見えないが、確かにそこにあるものを描いている。読後、何とも言えない余韻。
映画見てみたいなー
だが、最後に言わせてもらうと猫がひどい目にあうシーンがあり要注意だ。
そうそう、映画化を記念してAudibleでカズオ・イシグロの本が期間限定で解禁されています!ぜひ。
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【広瀬すず主演で映画化! カンヌ国際映画祭でも話題沸騰の映画化原作 9月5日(金)全国ロードショー】
イシグロが自身の出生地を舞台に書き上げたデビュー作!
戦後の長崎、女たちは懸命に生きた。どんな明日が待っていたとしても──。
ノーベル賞作家の原点! 映画化原作「カズオ・イシグロが故郷を描くとき、そこにあるのはいつも、後悔と喪失の記憶である。美しい故郷とは、それが美しければ美しいほど、美しさを見出したいくらい後悔した記憶を抱えている。そいうことについて、書いた小説である」
──三宅香帆(文芸評論家、本書「解説」より)
イギリスで暮らす悦子は、娘の自殺に直面した喪失感のなか、故郷の日々に思いを馳せる。戦後の長崎、復興しつつある街で、彼女は佐知子に出会った。娘を一人で育て、男と渡米する夢にすがる佐知子は、現実的な悦子とは対照的に見えた。だが回想するうち、悦子の記憶は揺らぎ、不穏の色を濃くしていく。時代に翻弄されながら自らの道を生きる人々の姿を描いたイシグロのデビュー作。映画化原作。
解説/池澤夏樹、三宅香帆
次に読みたい本?
面白そう~!広瀬すずちゃんめちゃくちゃかわいいな!
