iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に忘れっぽい私の読書録。最近はもっぱらAudibleで聞く読書

「狭小邸宅」不動産営業の闇ぶぶん

新庄耕の「狭小邸宅」を読んだ。

 

誰が住むんだと思うような細長い鉛筆型の家をたまに見かける。

それを狭小邸宅、ペンシルハウスとよんだりする。

ちょっと中を覗いてみたい。というか間取りがめちゃ気になる。

工夫の宝庫で中からは意外と広く感じたりするのかもしれない。ひょっとしたら住むのも楽しいかも。

 

 

さてこの小説はそんな「どんな状況の」住宅でも販売せねばならない、不動産営業の話。

 

当たり前だが営業にも「テクニック」と呼ばれる物があり、彼らは客を買わせるために手練手管をつかうのだ。

 

主人公・松尾は、売れない営業マンとして罵声を浴びせられ、ギリギリの精神状態で日々を過ごしている。それでも辞める決心はつかない。やがて彼は売れる営業マンへと変わっていくが、その過程で少しずつ「自分らしさ」を失っていく姿が描かれる。

 


読んでいて「不動産の世界なんて嘘ばっかりやん」と思ってしまった。正直不動産という漫画を連想する。そういえば、積水ハウスショールームに勤める友人が、この小説を営業マンから紹介されたと言っていた。なんだか色々と闇を感じるエピソードである。

 


物語のラストも印象的だ。松尾は明日をも知れぬ状態で物語はやや唐突に終わる。

 

ここから先は読者の想像に委ねるということか。個人的には、彼女を探し出して不動産営業から足を洗い、新しい人生を歩んでほしいと思った。

 

 

 

 

 



 

【第36回すばる文学賞受賞作】学歴も経験も関係ない。すべての評価はどれだけ家を売ったかだけ。大学を卒業して松尾が入社したのは不動産会社。そこは、きついノルマとプレッシャー、過酷な歩合給、挨拶がわりの暴力が日常の世界だった……。物件案内のアポも取れず、当然家なんかちっとも売れない。ついに上司に「辞めてしまえ」と通告される。松尾の葛藤する姿が共感を呼んだ話題の青春小説。

次に読みたい本

 

作者は、大ヒットドラマ地面師を書いた人である。不動産系に明るい人なのか?