伊藤 正一 の「ヤマケイ文庫 定本 黒部の山賊」を読んだ。
表紙からしてただ者ではない雰囲気を放つ「黒部の山賊」。本屋で一目見たときから気になっていたが、読み始めると案の定、「スゲー」の連発である。
語彙力が乏しくってごめんあそばせ。これは、とんでもない本だ。
舞台は戦後の黒部。荒れ果てた山小屋を再建するべく奮闘する著者・伊藤正一と、山に住まう「山賊」たちとの交流を描いたエッセイである。
時代がもう少し進めば「昔話」になっていたかもしれない破天荒なエピソードが、これでもかと詰まっている。
山賊といっても、いわゆる悪党ではない。
むしろ、自然の中で逞しく生きる山男たちであり、法律という「後出しジャンケン」に翻弄された人々だった。時代や価値観の変化によって、突如として“法律違反”にされてしまった彼らの姿が、著者の視点から温かく、そしてリアルに描かれている。
そして、「黒部の山賊」の醍醐味は、そのスケール感。中でも圧巻なのがクマの話。なんと、クマを捕まえて鍋にして食べてしまう場面が普通に出てくる。
特に笑ったのが、クマの肉球を「これが一番うまい」とばかりに薄切りで出されたというくだり。食べたらゴムみたいで噛み切れなかったというオチ付き。想像しただけで、「そりゃそうだろ」と笑ってしまった。
熊の手ってなんかなにか高級食材じゃなかったっけ?
(あたり。20万円だったって・・・!)
ちなみに、著者自身もクマの親子に餌付けしていて、来なくなったときにちょっと寂しがっている。
山賊どころか著者もなかなかの山暮らし適性ありだ。面白いのは、そんな状況でもクマが「恐怖」として描かれていないところ。「黒部の山賊」は、そうした視点の柔らかさも魅力の一つである。
さらに、山賊だけでなく、山にまつわる不思議な話や、亡くなった青年の命日に毎年現れる“訪れ”など、ゾッとする話やしんみりする話も挟まれていて、最後まで飽きずに読めた。山の奥深さ、人間の営みの魅力が詰まった一冊だった。
この作品はAudibleで聴きました。体験はこちらから!
\ 無料体験中でも12万冊以上が聴き放題 /
👉 Audible無料体験(Amazon公式)
北アルプスの最奥部・黒部原流域のフロンティアとして、
長く山小屋(三俣山荘、雲ノ平山荘、水晶小屋、湯俣山荘)の経営に携わってきた伊藤正一と、
遠山富士弥、遠山林平、鬼窪善一郎、倉繁勝太郎ら「山賊」と称された仲間たちによる、
北アルプス登山黎明期、驚天動地の昔話。
戦後の混乱期に山小屋を経営し、事業を軌道に乗せようとするなかでの、
「山賊」たちとの交流、不思議な経験が綴られる。
山賊たちとの出会い、山賊との奇妙な生活、埋蔵金に憑かれた男たち、山のバケモノたち、山の遭難事件と登山者、山小屋生活あれこれ……。
補遺に「遭難者のお礼参り」。
戦後の混乱期とまだ未開の黒部に関する逸話満載の不思議な魅力あふれるロングセラー。
「人物グラフィティ」、「黒部源流グラフィティ」を再構成し文庫化。
次に読みたい本
熊マジで怖い。これを読んで黒部の山賊を読むと同じ熊とは思えない。
黒部では、おばあさんが熊にのしかかられたけど「近所の子どもがいたずらしてる」と思い、持っていたざるだか鍋ぶたで、たたいて追いやった。とか書いてあるのだ。
こっちも読んでみたい。


