小泉八雲の「力ばか」を読んだ。
とても短い怪談だが、胸に残る余韻がある。
主人公の力(りき)は、16歳になっても心は2歳のまま。
印象的だったのはこの一文だ。
彼は生まれつき子どもの心のままだったからです。そのため、人々は親切にしていました。
普通なら、こういう子はからかわれたり、いじめられたりするだろう。だが、この物語では違う。人々は力に親切にしたというのだ。美しいありし日の日本が見える気がする。
そんな力は、若くして脳の病気か何かで亡くなってしまう。母親は息子を埋葬するとき、手のひらに「力ばか」と書いた。
息子がもっと幸せな場所に生まれ変わった時に解るように、母親なりに知恵を絞ったのだろう。
しばらくして、あるお屋敷に子どもが生まれる。手には、はっきりと「力ばか」の文字。
周囲は「これはなにか特別な者の生まれ変わりだ」と噂し、ついに力の母のもとにたどり着く。母は、わが子が金持ちの家に生まれ変わったと喜ぶが、家来たちは顔を曇らせる。なにしろ、「ばか」という文字が刻まれたままなのだ。
彼らは力の墓の土を求める。
「その文字を消すには、埋葬された墓の土で削り取るしかない」からだ。
このくだりが怖い。血も叫びも出てこないのに、上品で静かな恐怖がある。
小泉八雲の「力ばか」は、創作というよりも、どこかで聞いた実話をそのまま書き留めたような手触りがある。
最後は唐突に物語が途切れ、余韻だけが残る。現代の怪談のような派手なオチはないが、まさしく“実話系怪談”の原型のようだ。
(でも今だったらもっとオチがもっと過激じゃないとみんな喜ばないかも。)
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