骨太のよいノンフィクションだった。
22億円の横領事件。対馬の海に車ごと沈んだ一人の男から物語は始まる。
彼の名は西山。JAのエース職員であり、対馬の人口の1割が彼の契約した共済に加入していたという。
もしここが人口百人の村であれば驚くに値しないが、対馬には3万人も住んでいる。なぜ彼はそこまで契約を取れたのか。そして、なぜ命を落とさねばならなかったのか――。
窪田新之助のノンフィクション「対馬の海に沈む」は、まるでサスペンス小説のような緊張感で始まる。だがフィクションであれば、あまりにも報われなさすぎる展開だろう。ノンフィクションだからこそのもやもやだ。
調査の過程で筆者は、偶然やラッキーに頼らない。
何度も資料を見直し、粘り強くインタビューを重ね、西山の足跡をたどっていく。
経済関係に疎いので途中ちょっと気持ちが入らなかったが、後半、西山の生活が荒れていく様子などが丁寧に掘り出されるシーンでは感情移入が止まらなかった。
当初の印象は「姑息な横領犯」だ。しかし読み進めるうちに、西山は巨大なJA組織の歯車であり、「結構気のいい田舎のヤンキー」で、どこか憎めない人間だったのではないかと思えてくる。
大体今の時代に眉を逆八の字に剃り上げているなんてなかなかよ。
横領額は22億円。にもかかわらず、その手口は決して巧妙とは言いがたい。もっと早く誰かが気づいてもおかしくなかった。
実際、西山の死のずっと前に、上司が内部告発をしていたのだ。上司が告発者になる時点で、このJAの構造がおかしいことは明らかだろう。
西山は果たして、自分の私服を肥やすためだけにここまでのことをやったのか?一人でできる犯罪じゃないのでは?
終盤戦に至って、疑惑の目は西山以外に向かう。
結論から言うと、共犯者が沢山いたのだ。
ただ、彼らは一人ひとりは無自覚に加担していただけで、自分が悪いとは思っていない。西山だけに罪をなすりつけて、今では口を拭っている。
そんな結末にたどり着いた筆者は、「吐き気を催す」と表現している。言葉にできないほどの後味の悪さが、この事件にはあるのだ。
最後になるが、西山の両親が、JAに月々7万円の返済を続けているという。
22億円の横領を何年も阻止できなかった組織が、年老いた親からそんなお金を取り上げてどうするつもりだろう。胸が痛む。
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2024年 第22回 開高健ノンフィクション賞 受賞作。
JAで「神様」と呼ばれた男の溺死。
執拗な取材の果て、辿り着いたのは、
国境の島に蠢く人間の、深い闇だった。
【あらすじ】
人口わずか3万人の長崎県の離島で、日本一の実績を誇り「JAの神様」と呼ばれた男が、自らが運転する車で海に転落し溺死した。44歳という若さだった。彼には巨額の横領の疑いがあったが、果たしてこれは彼一人の悪事だったのか………? 職員の不可解な死をきっかけに、営業ノルマというJAの構造上の問題と、「金」をめぐる人間模様をえぐりだした、衝撃のノンフィクション。
次に読みたい本
いや~夏はノンフィクションだね。ということでおすすめのノンフィクション。
これは、読みながらかなり叫んだ。早く捕まえて!!
こちらは、最近読んで鳥肌が止まらなかった。
あたかも監獄実験のようにどこまでも人が残酷になれる様子が恐ろしい。
これは、読んだあとしばらく人におすすめしまくってた。
これはね、ホント女性に読んでほしい。たぶん殆どの人にぶっ刺さると思う。
コミカライズされてた。読んだらいい!!!みんな読んだらいいよ!




