iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に忘れっぽい私の読書録。最近はもっぱらAudibleで聞く読書

「白木蓮抄(マグノリアショウ)」少女漫画が花ひらいた時代

花郁悠紀子 の「白木蓮抄(マグノリアショウ)」を読んだ。

 

少女漫画が花開いた時代の作品で、テーマがとても私好みだった。

 

表題作『白木蓮抄』は、戦後の地方を舞台にした物語。
引退した老女優と、その隣に住む若い娘の交流が描かれている。


“戦争が私から何も奪った”と語る老女優は、生き別れた娘が亡くなったことを知り、娘との思い出が詰まった写真を燃やしてしまう。


燃え盛る炎に照らされたその顔は、まるで夜叉のようだった。

いたるところに花が舞い散る画面は、さすが少女漫画の世界。
思わず息を飲む美しさがそこにある。

この作品を読もうと思ったきっかけは、山岸凉子の『ゆうれい談』に登場する、あるシーン。
「早逝した漫画家の友人が仏様の姿で現れた」という場面があるのだが、それはまさしく、この本の作者・花郁悠紀子のことだそう。
そのエピソードがとても素敵で、手に取ってみた。

 


短編集には、表題作を含む6篇が収録されている。
中でも私が一番好きなのは、絵柄が一番古く感じられる初期の作品と思われる『それは天使の樹』。
漫画家の叔母と高校生ヘースケのコメディのなか、
「槐(えんじゅ)」と「エンジュ(天使)」を掛けた、素敵なエピソードが心に残る。

 


優雅――この一言に尽きる短編集だった。

40年前のこの漫画家まだ思い立った時にKindleで買えるって、素晴らしい。

 

よーし今日はこのまま寝て良い夢見るぞー

 

 

 

白木蓮抄(マグノリアショウ)

瑞々しい感性で書き出された悠久の幻想…。その才能を惜しまれつつ夭逝した花郁悠紀子の珠玉傑作選。

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