近藤ようこの『たそがれの市 あの世お伽話』を読んだ。
ずっと読みたかったが、先日Kindleで50%還元になっていたことに気づき即買い。
私、近藤ようこ大好きなのでかなり執拗にウォッチしているのだが、この作品が50%還元になるのは初めてかも。
たまに冷静になって思うのだが、電子書籍は値段の変動があるから、まるで株式売買のようなスリルがあるなと。もはや、頑張って狙ってた獲物をゲットした喜びまである。謎の達成感。
さて、簡単にあらすじをご紹介。
表紙の少女は「おきく」ちゃん。9歳の時に事故で命を落とし、死者たちが集うたそがれの市で暮らしている。
9歳のまま歳を取ることもなく、たまに紛れ込む生者を相手に市で暮らしている。
死者はもうこれ以上死なないので、そこにはある種の陽気さが漂う。
だが、決して極楽ではないのだ。働かなければ生きていけない。
全11話、外からやってきた「生者」と死者との交流が描かれている。
死者たちは生前と同じ姿のまま。ホラーじみた怖さはなく、むしろ穏やかな不思議な世界観。
彼らは時折「自分がもう生きていない」という現実を思い出しながら、変化のない毎日を永遠に続けている。
一瞬、「死後の世界がこんなに生者の暮らしと変わらないのなら、死ぬのも怖くなくなるかも」と思う。
けれど実際には逆で、「ずっと変わらない」という永遠に耐えられるか、と考えると、むしろ怖さが増してしまう。
そういう虚無感のような、儚くも切ない感覚が心に残る。
表紙のおきくが持っている人形は、リカちゃん人形的な現代風のもの。どうしてなのかは読んでのお楽しみだ。
市で何も買わずに去った者は生き返るのだが、リカちゃん人形の持ち主もきっとお母さんとお父さんが迎えに来てくれて、息を吹き返したのだと思いたい。
死ぬと最初にたどり着くさびしい場所、それが「たそがれの市」。
自分が死んだと気付かない“大人のおいと”を見かけた少女のおきく。おきくはおいとにまとわりつく幽霊を遮り言う。「お前は元の場所に戻りな」と。神隠しとされていたおきくは、幼馴染のおいとと谷筋でもみ合ううちに――。たそがれの市でおきくの思いを知ったおいとは……(「第一話 紅の皿」)。ほか、病で先だった母が子を思う深い哀しみを描いた「第二話 涙池」や身分違いの恋と因縁を描いた「第三話 思い出」、津波に流されて命を落とした娘を探し求めて迎えにくる現代の家族との交流の物語「第四話 津波」など。たそがれの市で、思いを残した死者と生者が交わるとき……生と死という壮大なテーマに向かい合った感動の全十一話。
次に読みたい本
めったに半額にならない山岸凉子も、今回は半額セールに。
今度こそは踊らされないようにしようと思っていたのに、
プライムデーに踊らされる私。

