iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に忘れっぽい私の読書録。最近はもっぱらAudibleで聞く読書

「深淵のテレパス」理不尽で終わらないところが良き!

上條 一輝 の「深淵のテレパス」を読んだ。

「このホラーがすごい!2025年」で第1位に選ばれていたことを本屋で知り、これは読まねばと。

 


物語は、小気味よい先輩社員の晴子さんと、自己評価が低い「僕」、そしてやり手の営業部長・カレンさんの視点で交互に描かれる構成。

 

カレン視点では描かれなかった“真実”が次第に明らかになっていき、呪いをかけられた被害者という顔とは別の一面が浮かび上がるところなどは、ホラーというよりミステリ寄りの趣。

 

怪現象に悩まされるカレンが、ついに調査を依頼したのは、晴子さんと僕が運営する超常現象調査――という名の、オカルト系YouTubeチャンネルだった。


晴子さんは、「バズりたい!」というよりも、本気で“超常現象は存在するのか”を突き詰めたいという熱意に突き動かされて活動しているようで、なかなか魅力的なキャラクターだ。

 


最近のホラーって、ただ怖いだけじゃなくて、キャラクターの魅力やミステリー要素も兼ね備えているものが多い気がする。本作も、考察系とはまた違った、物語性のしっかりしたホラーだった。


そういえば、最近読んだ『撮ってはいけない家』も、女性の先輩と男性の後輩というペアだったな……。

 

エスパー少年(今やエスパーおじさん)と、超現実主義の元刑事の私立探偵という対照的な二人が登場する終盤も興味深い。

 

オカルト的解釈をする者と現実的な視点を持つ者が並び立つことで、「人知を超えた怪異は、実は人間による犯罪だったのでは?」と、別の恐ろしさを匂わせつつ幕を閉じる。

 

理不尽で終わるホラーとは違い、バランスの取れた終わり方で好印象だった。
「説明のつかないことも、説明をつけようと思えばできてしまう」――そんな視点が、またひとつ、別の種類の怖さを与えてくれる作品だった。

 

ichi-z.com

 

 

 

深淵のテレパス

あなたが、呼ばれています。
あなたには、その声を聞くことができません。
私は、暗い水の底にいます。暗く、危険な場所で、あなたを待っています。

私は、姿かたちを変えて、あなたの前に現れる。
とても、醜い姿で。
恐ろしい私の姿を見たあなたは、正気を保っていられなくなるかもしれません。
私は、そうなることを狙っています。

……あたなに伝えておきます。それが、私にできる唯一のことだからです。
光を、絶やさないでください。
(『ある女子学生の怪談』より抜粋)

「変な怪談を聞きに行きませんか?」会社の部下に誘われた大学のオカルト研究会のイベントでとある怪談を聞いた日を境に、高山カレンの日常は怪現象に蝕まれることとなる。暗闇から響く湿り気のある異音、ドブ川のような異臭、足跡の形をした汚水──あの時聞いた“変な怪談”をなぞるかのような現象に追い詰められたカレンは、藁にもすがる思いで「あしや超常現象調査」の二人組に助けを求めるが……選考委員絶賛、創元ホラー長編賞受賞作。

次に読みたい本

このホラーがすごい! 2025年版

 

背筋さんが顔出ししているという話を聞き、ちょっと立ち読み。。

むー、なんか想像よりずっと爽やかイケメン!