倉知淳の『豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件』を読んだ。
なんとも人を食ったタイトルである。
あっ、よく見たら——ただの白い表紙かと思いきや、豆腐の角にうっすら血糊が…やるな!
豆腐では凶器にならないはずだが、密室状態の部屋の中で男が死んでいた。その周囲には崩れた豆腐が散乱している。
男の頭には、角のある硬いもので殴られた跡がはっきり残っていた。しかし現場には、凶器になりそうなものは何もない。そう、豆腐以外は——。
そんな奇妙な状況から、殺人の真相を追っていくのだが……。何しろ舞台は戦時中。とんでもない科学者が「人間魚雷」ならぬ「人間ミサイル」を開発しており、その原理たるや——自転車を漕いでエネルギーを貯め、人力で宇宙へ!
で、実験がうっかり成功してエネルギーがどうたらこうたら……結果「世界が裏返り」、なかったはずの凶器が現れてしまう。
だからこれは事件じゃなくて事故だったのだ!……という結末。
いやいやいや、と思うけど大丈夫。ちゃんと論理的な回答が用意されている。
実際に起こったこと自体は単純で、1本のミステリーにするにはやや弱いトリック。でも、当時の時代背景や要素をうまく絡めて、独特で面白い物語に仕上げているところがさすがだ。
何より、凶器の出現方法が奇天烈極まりない(図解まで載っている!)のがツボ。ひねりが効いていて思わず笑ってしまう。
表題作以外の短編も、ユーモアミステリとはいえ筋道立った解法が用意されており、読みやすいものばかり。
そして最後に登場する猫丸先輩!
今回は「猫メロンくん」の着ぐるみアクターとして現れるのだが、その頭部は黄緑色の、ひび割れた砂漠の前衛芸術にしか見えなかったという。
……いちいち面白い。
密室殺人の凶器は
まさかの豆腐!?前代未聞のユーモア&本格ミステリ!
村上貴史氏(ミステリ書評家)絶賛!
「ロジックに染められたミステリならではのマジック」奇想ここに極まれり――
本格ミステリの玉手箱!戦争末期、帝國陸軍の研究所で、若い兵士が頭から血を流して倒れていた。
屍体の周りの床には、なぜか豆腐の欠片が散らばっていた。
どう見てもこの兵士は豆腐の角に頭をぶつけて死んだようにしか見えないないのだが……
前代未聞の密室殺人の真相は!? ユーモア&本格満載、おなじみ猫丸先輩シリーズ作品も収録のぜいたくなミステリ・バラエティ!〈目次〉
変奏曲・ABCの殺人
社内偏愛
薬味と甘味の殺人現場
夜を見る猫
豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件
猫丸先輩の出張
解説/村上貴史
次に読みたい本
この唐沢なをきが描いた表紙が好きだー
猫丸先輩はかわいいけどあんまり友だちになりたくないタイプ。