竹中優子の「ダンス」を読んだ。
新入社員の「私」が配属された5人の部署は、係長と先輩3人。
その3人の先輩たちが三角関係で泥沼だった。
自分では気づいていないのだが、係長に呼び出され、「仕事を覚えるよりも、みんなと馴染むことを優先してくれていいから」と言われるほど、私は職場に馴染めていなかった。
そもそも「馴染む」とはどういうことなのか? どうしてそんなに馴染むことが偉いのか? 彼女にはやっぱり理解できない。
なかなか生きるのが大変そうだし、
そうだよね。おっしゃるとおりなんだよね。でもさ~
と周りがいいたくなるのがよく分かる。
泥沼の三角関係のせいで、職場の人たちは休みがち。特に先輩社員の下村さんは、週に3日も休むことがある。
そのせいで、彼女の仕事の負担が増え、残業続きの日々が続く。
三人まとめてビンタしてやりたい。と思うところから物語はスタートする。
失恋で大荒れしている下村さんに付き合っているうちに、徐々に仲良くなる二人。
いや、仲良くなるってどういうことかわからないまま、キャラで押し切られていく。
(下村さんの酒豪伝説がすごい。ハイボールなら40杯くらいいけるよ、とか)
人との距離感がうまく掴めない彼女が、下村さんに押し切られて徐々に踏み込んでいくところが微笑ましい。
ビンタしたいです。なんて本人を目の前にして言っちゃう私と、すっと仲良くなれる下村さん。
やがて二人は彼女の部署異動により徐々に疎遠になりある日メールが届かなくなっていることを知るのだが、その間の私にはいろいろな大きな変化が訪れる。
後半の10分の1くらいで語られることのほうがよほどドラマティックなのだ、その部分あえてカットされている。
数十年後、二人は偶然ディスカウントショップで再会する。その短い邂逅が、物語の締めくくりとなる。
会えない間に、結婚して不妊治療して子どもができず別れ、大きな病気の再検査まちという濃縮されたエピソードを、彼女は「そうですね、普通の人が高校生の時にあじわうようなことを味わっていた30代でした」と告げる。
下村さんはなにそれ?と言わずに「いい30代だったんだね」と返す。
本当にそれだけの短い邂逅だったのだが、彼女は元気を取り戻す。
落ち込んでいたけど、まだ読みたい本もたくさんあるしね!とぐっと前に歩み始める。爽やかな読後感。
それにしても、ビンタのエピソードで「大島渚と野坂昭如がビンタするシーン」のYoutubeの話が数回出てくる(何歳だよ)ので、検索。
うわ、すごい。ほんとに殴ってら。
今日こそ彼らに往復ビンタ。もやもやはびこる職場と私を描く芥川賞候補作。
同じ部署の三人が近頃欠勤を繰り返し、その分仕事が増える私はイライラが頂点に。ある日、三人のうちの一人、先輩女性の下村さんから、彼らの三角関係を知らされる。恋人を取られたのに弱っているのか開き直っているのか分からない下村さんの気ままな「ダンス」に翻弄される私は、いったいどうすれば――新潮新人賞受賞作。
次に読みたい本