住野よるの「歪曲済アイラービュ」を読んだ。
帯に“著者暴走”と書いてあったが、まさにその通りだった。
超ハイテンションの配信者「こなるん」の一人語りから始まるこの物語。
特徴的なタイトルで始まる全11篇の中編集。
最初は物語のつながりがわからなかったが、段々と「滅亡を信じる者たち」の話であること、そしてこれらの話が最後の一編ですべて伏線回収(と言うほど企んだ感じでもないか)されていく。
犬含めいろんな語り手が生み出すストーリは、ときにドキリとさせられたり、ただひたすら勢いに押されたり、せつなかったり、少々毒が聞きすぎていたりとバリエーションに富んでいる。
すごく面白かったけど、自分の事は棚に上げて、おじさんおばさんたちはみんなついてきているかなーと心配になる。
なんというか、配信見たことないしスパチャとかも知らない人にはそもそも、ところどころ意味がわからん、と思いながらも、こなるんの語りがすごい密度で押し寄せるので押し流されるように読んでしまう。
よく、一気読み必至というけれどまさに、一気読みをした。
勢いを楽しむ本という側面は多いにある気がする。
流されるように最終章まで辿り着きやっと今までのストーリがそれぞれの配信を見に来ていた人たちだとわかるのだ。
最後の終わり方も、「あ。」ってなるのでぜひ楽しんでほしい。(これ以上は言えないな)
ちなみに一番好きなエピソードは、カニバリズム的嗜好がある女性の先輩が、
「なんか内臓を食べるーとか言う映画あるでしょ」と。
最後、私大声で突っ込んじゃったわよ、「食べないのかよ!」って。
・・・自作の「君の膵臓をたべたい」のことを言っていることに気づいて爆笑。
とにかくハイテンションでご機嫌で、でも終末を迎えるディストピア小説。
世界が滅びるなんて、最高だ。
常識も正論もぶっ飛ばす、超弩級のジェットコースターエンタメ、開幕!底辺YouTuberの生配信チャンネル「こなるんの予言ちゃんねる」で告げられたのは「世界の滅亡」。嘘か真か一切不明、けれど同じように「他人には見えない不思議なもの」が見え始め、終末を確信した者たちは、最後の行動に出る。
ずっと「いい子」だった女子高生も、本当は悪魔だという先生も、幼馴染の前で精神的自傷行為を続けてきた大学生も、職場の先輩のお料理教室に通っていたOLも、妻に愛の音楽を奏でる青年も、獣のように無垢な少女も。クレイジーなこの世を走り抜くために、皆「まとも」なままじゃいられない。振り切れた彼らが、なりふり構わず向かった先は――。
驚きと企みに満ちた、エキサイティングな全11篇。
次に読みたい本
雑談。
本日は息子の高校の運動会で最後なので観に行った。
いままでちょっとだるいなーと思ってスルーしていたのだが、やっぱり生の高校生たち一人ひとり観ると、それぞれのキャラクターとかきらめきなどがあって、見応えがあった。
いいのう。
で、いつも形を整えられた物語ばっかり読んでいて、きちんと世界を見ていなかったなとちと反省した。
咀嚼してもらい形が整ったわかりやすいたエンタメばっかり摂取して、こういう楽しいかどうかわからない物を自分で探しに行くのは苦手にしていたかもしれない。
ま、これから探していけばいっか。