江戸川乱歩の「幽霊」を読んだ。
憎い男が死に、ようよう一安心と胸を撫で下ろしてた平田氏は、
やつの葬式の数日後に恐ろしい手紙を受け取る。
「生きているうちはカタキが取れなかったが、死んで魂になったからには、もうどこにでもいける。きっとお前を殺してやる」
以降、平田氏は戦々恐々と男の影に怯えながら暮らす。
気分転換にと出かけた療養先でも男の姿を発見し、取り乱しているところを爽やかな青年に助けられる。
その青年が親身になって話を聞き、謎を解いてしまう。
彼こそがみんなのヒーロー明智小五郎だったよ、というお話。
この時代にしか使えないトリックではあるけれど、明智小五郎のかっこよさが存分に味わえる短編。
江戸川乱歩って、怪奇とか幻想、もしくはエログロのイメージもあるけど、やっぱり名探偵をスマートに描いているこういう作品が好きだなー
子供の頃、明智小五郎シリーズが大好きだったことを思い出す。
今でも忘れられない衝撃のシーンがあって、作品名は忘れたが、小林少年が登場していたので、おそらく少年探偵団シリーズの一作だろう。
明智小五郎が趣味として「難しい数学の問題を解く」ところがあって、ものすごく驚いたのだ。
勉強を楽しいと、誰からも強制されずにやる人っているんや!!
私の周りの大人は、家に帰ってきてから勉強しているところなんて見たことないし、していたとしても資格試験とか。
いわんや、数学を!
という衝撃である。
そして、私は思ったのだ。
(今はこんなに憎い数学だが)大人になったら、パズルみたいに数学の問題を解く、ってかっこいいかも。
十分に大人になった今、全く数学の問題を解いてみようという気はしない。
気がしないが、今ならひょっとしてパズル的な楽しみ方はできるかも、って思う。
そして、その気になれば息子の部屋から数学の教科書を借りてくればすぐに叶う。
・・・多分しないけど。
幽霊が含まれる短編集。
こちらの文庫はなんと明智小五郎の事件が書かれた順ではなく、明智小五郎の年齢順に並べられた全集がらしい。
ちなみに明智小五郎の初登場は「D坂の殺人事件」らしいから、「幽霊」は2作目ってことか。どうりでまだ売り出し前、っていう感じするもん。
この作品では明智小五郎は派手な作品で派手な活躍をするわけではありませんが、明智の趣味嗜好が明確になった作品でもあります。
「幽霊よりも怖いものは生きている人間」。
聴取後にそんな感想を持つ方も多いと思います。
次に読みたい本
小学校の図書館で全巻制覇したなぁ。
今考えるととても真似できない根性