有栖川有栖の「日本扇の謎」を読んだ。
国名シリースの新作では、火村と有栖コンビが新たな事件に挑む様子が描かれている。
今回も安定のバディが事件を解決!
この二人は歳を取らなくていいなぁ。読者は気がつけば二人の年齢を追い越してしまいぼやぼやしていたら、火村の下宿のおばちゃんの年齢に追いついてしまいそう。
印象的だったのは、冒頭の有栖の創作ネタばらしシーン。
「日本扇の謎」というタイトルを軸にミステリーを書こうとする有栖が、ああでもないこうでもないとトリックをもちもちする様子が、実際のミステリー作家はこんなふうに話をつくるのかと新鮮だった。
作者と同じ名前の小説家というキャラクターゆえ、作中でミステリの構想を練ると、とってもメタな展開にきこえるが、そこはキングの落ち着きで(いや、キングどこから出た?)って感じだけど、最後はきれいに着地をする。
今回も二人の仲の良さを見せつけられた。
30年前は気づかなかったが、絶対今の子達(と一冊目から追いかけ的な私)はこの二人の関係性に尊さを感じているに違いない。ぐふ。
今回も広いお屋敷の離れの密室で殺人事件が起こるという、魅力的な出だしからスタートするが、犯人の動機もトリックも特別なものではなくて、何だが、普通の人がエアポケットに吸い込まれるように、ふっとひどいことを考えてしまって、しかもそれがうっかりうまく行ってしまったような犯罪だった。
だからこそ、事件の解決が難しかったんだけど、超本格ミステリにありがちなファンタジーかよと突っ込みたくなるようなトリックではなくて、人間の心の弱さとか残念な生き方が招いた殺人だったわー
まだまだ、この国名シリーズは続くようで楽しみ。
こうなったらいつまでも付き合いまっせ!
お体大事に、火村の闇を昇華してかんけつまでさせてね、中の人の方の有栖さん!
次に読みたい本
作中に挙げられていた話。今回の話は記憶喪失とミステリーをくみあわせる、ってのが一つのテーマなんだけど、こちらの山本周五郎では、記憶喪失の娘と結婚したが彼女がいつか記憶をとりもどすのではないかと心配する武士の話らしい。
過去に彼女を取られてしまうことを恐れる、っていうのはあるのかもしれないナー