近藤 史恵の「たまごの旅人」を読んだ。
添乗員になりたての主人公遥が直面する厳しい現実とちょっと心温まるショート・ストーリーズ。
まず、添乗員の待遇が思ったより過酷でびっくり。
非正規雇用だわ、出産育児をしながらでは続けられないし、とても「旅行が好きだから」で続けられる仕事ではなさそう。
それでも、真摯にツアー客に楽しい思い出を作ってもらえるよう頑張る遥だったが、コロナ禍に見舞われそもそも、海外旅行自体ができなくなってしまう。
まだ5年ほどしか経っていないのに当時の大変さを忘れてしまっていた私は、久しぶりに「誰かと食事をするのですら非難をあびていた」あの頃思い出した。
幸いなことに私の仕事は、コロナ禍でも続けられる職種だったが、当時はサービス業を中心に収入が絶たれて大変な思いをした人も多かった。
あんなに大変だったのに、もう「あれって現実だったかな?」くらいに喉元すぎれば熱さ忘れる私。
いや、しかたあるまい。
一年毎に巡る季節ですら「夏ってこんなに暑かったっけ?早く冬になれ」と思うのだから。(そして冬には夏になれと思う)
海外旅行に行くならツアーじゃなくて自分で自由に、と思わなくもなかったけどこの本を読んでツアーならではのメリットも知った。
受け売りだが、まず何度も行く国ではないのだから、旅程の中にコンパクトにその国のスポットが詰め込まれている。それに、言葉の壁などでできないことも添乗員さんのサポートがあればできる。
確かにロストバゲッジ(空港で荷物だけ別の飛行機に乗ってどこかに旅立つ)なんて、とても一人じゃ太刀打ちできる気がしない。
ストーリにの中では「非正規雇用」「男女の差別」「年齢の差別」「国に対する差別」など様々な問題が見え隠れするが、なんとなくふんわり終わってしまう。
私もエンタメとして読んでいるのであまり深追いはしなくても良いと思う。
それよりも、置かれた状況の中で輝く方法を模索する遥のしなやかな強さを感じられてよかった。
明日もちょっと頑張ろうかな、と思えるお仕事小説。
念願かなって海外旅行の添乗員になった遥。風光明媚なアイスランド、スロベニア、食べ物がおいしいパリ、北京……
異国の地でツアー参加客の特別な瞬間に寄り添い、ひとり奮闘しながら旅を続ける。
そんな仕事の醍醐味を知り始めたころ、思わぬ事態が訪れて――。
ままならない人生の転機や旅立ちを誠実な筆致で描く、ウェルメイドな連作短編集。
次に読みたい本
各国の代表的な料理を写真付きで紹介してくれていて楽しい一冊。
全部カラーだし、ほーとかへーとか言いながら読むのにちょうどよい。
(でもレストランガイドは首都圏ばっかりでイラッてくる。)
話は変わるが、先日、世界中を旅したという人にどこの国の料理が一番美味しかったか聞いたところ「ジョージア(グルジア)」と「メキシコ」と言ってましたよ。
プライムでも読めるのでぜひ。