今年の本屋大賞、阿部 暁子の「カフネ」を読んだ。
物語は最愛の弟を突然亡くした薫子の視点で語られる。
死ぬ前に紹介された弟の恋人、小野寺せつなは、つなぎ服にゴツいブーツをはいた愛想がない女性。
しかし、弟は彼女に遺言で遺産を残していた。
薫子は、弟の早すぎる死に疑問を持ちつつも第一印象が最悪だったせつなと連絡を取る。
物語がすすむに連れ、鋼鉄の女のようだったせつなが、かわいい年下の友人のように思えてきた薫子。
弟の代わりに、せつなといっしょに家事手伝いのボランティア活動をやっていくうちに
ヒステリックで神経質な女として描かれていた彼女自身も、実は満身創痍で苦しみながら生きてきたことが明らかになる。
そして、最初は起こってばかりだった薫子も
せつながつくる美味しそうな料理のお陰で、徐々に安らかさを取り戻す薫子。
そして後半のターンは、鋼のように鎧をつけたせつなを薫子がびっくりするようなおせっかいで救う。
愛とか恋とか、血の繋がりだとかではない新しい関係に落ち着いた二人。
パートナーシップ制度という物をはじめて聞いたが、未婚率がどんどん上がるこれからの時代、婚姻関係以外の関係もちゃんと法的に認めていっとかないと本当に困るだろう。
例えば同性愛カップルだけではなく、仲の良い友達と助け合って生きていきたくても、今の日本では救急車に同乗して手術同意書を書いてあげることもできないのだ。
最初は、怒りっぽかった薫子がどんどん頭の回転の早い口の達者なお姉さんキャラになっていって、二人の掛け合いも楽しい小説。
人間の数だけ人間関係って生まれるの知っていたけど、この二人には本当に奇跡のような関係ができて、尊いわ~自分まで心が暖かくなる、そんな物語でした。
☆2025年本屋大賞受賞作☆
【第8回未来屋小説大賞】
【第1回あの本、読みました?大賞】一緒に生きよう。あなたがいると、きっとおいしい。
やさしくも、せつない。この物語は、心にそっと寄り添ってくれる。最愛の弟が急死した。29歳の誕生日を祝ったばかりだった。姉の野宮薫子は遺志に従い弟の元恋人・小野寺せつなと会うことになる。無愛想なせつなに憤る薫子だったが、疲労がたたりその場で倒れてしまう。
実は離婚をきっかけに荒んだ生活を送っていた薫子。家まで送り届けてくれたせつなに振る舞われたのは、それまでの彼女の態度からは想像もしなかったような優しい手料理だった。久しぶりの温かな食事に身体がほぐれていく。そんな薫子にせつなは家事代行サービス会社『カフネ』の仕事を手伝わないかと提案する。食べることは生きること。二人の「家事代行」が出会う人びとの暮らしを整え、そして心を救っていく。
次に読みたい本
二人は様々な事情で家事が疎かになっている人たちを助けるボランティアをしている。
せつなが手際よく作るつくりおき料理に、要するにタサンしまってことでしょう?