朝井リョウの「時をかけるゆとり」を読んだ。
史上最年少で直木賞を受賞した朝井リョウは、エッセイもまた名手である。
エッセイは、ゆとり三部作と呼ばれ、以下の通り3冊刊行されている。
時系列的に読みたいならこの順番で。
- 時をかけるゆとり(2012年刊行):
- 大学生から社会人になりたての頃の朝井さんの日常
- 就職活動やアルバイト、大学生の夏の旅行、直木賞受賞後のエッセイが含まれる。
- 風と共にゆとりぬ(2017年刊行):
- 作家として活動を始めた朝井さんの日常
- そして誰もゆとらなくなった(2022年刊行):
- 「ゆとりシリーズ」の完結編。
- 30代になった朝井さんの日常
どれを読んだか、どれから読んだらいいかわからなくなりがちだが、今回私が読んだのは、大学生にして小説も執筆していた頃の最初期のエッセイである。
東京から京都まで自転車で旅行したり、仮装して100キロハイクしたり、大学生らしく楽しく遊んでいる話から、段々と就職活動の話が多くなり、就職が決まり痔を患うところまで、フレッシュな朝井リョウを満喫できる。
この朝井リョウのイメージが強すぎて「正欲」は本当に同じ人物が書いたのかしらん、と思うほどだった。正欲もすごく考えさせられる良い小説だった。映画化も納得である。
今回のエッセイでは、母上の話もとてもおもしろかったのだが、直木賞受賞直後の「小説家になるまで~人生ゲームが大好きな小学生だった~」がとても良かった。
本人は掲載を「イキってて恥ずかしい」みたいな感じで茶化していたけれど、小説家になるべくして直線で目指してきた青年期の青臭さが感じられた。
やっかまれたりることとも多いだろうが、単なるラッキーパンチがあたっただけではないことは彼のその後の作品を見ても分かる。
サラリと書いているけど、中学時代に500枚のバトルロワイヤル小説を夏休みに提出した話とか、なかなかすごい。
直木賞受賞作家という雲の上感を拭い去ってくれるこのエッセイ。
爆笑エッセイ大好きな私としてはとても満足な一冊だった。
就職活動生の群像『何者』で戦後最年少の直木賞受賞者となった著者。初のエッセイ集では天与の観察眼を縦横無尽に駆使し、上京の日々、バイト、夏休み、就活そして社会人生活について綴る。「ゆとり世代」が「ゆとり世代」を見た、切なさとおかしみが炸裂する23編。『学生時代にやらなくてもいい20のこと』に社会人篇を追加・加筆し改題。
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