坂木司の「ショートケーキ」を読んだ。
いちごがちょこんと乗ったショートケーキを軸にした、連作短編集だ。
読めば読むほど、ケーキが食べたくなる大変罪作りな本だった。
そして、あの見るからに洋風のお菓子は、日本発祥のスイーツらしい。
あんぱんやカレーパンのように。
ショートケーキは、ストーリーの登場人物がまるでリレーのように入れ替わりながら話が進んでゆく物語。
例えば第一話の「ホール」で最後に出て来たケーキ屋の店員が、第二話では主人公になっている。
その次の話では、その男の子の姉が、次は姉の職場の人が、というように物語が進んでゆく。
コージーコーナーのショートケーキが一つのキーワードなんだけど、九州ってそういえばコージーコーナーないかも。
コンビニスイーツ以上、パティスリー以下のコージーコーナー。
(って書いてあったのよ。)
どんなに疲れてても、いや疲れていればいるほど甘いものを求める人は多い。
私も血液検査の値など気にしない生き方を選ぶなら、シュークリームとか毎晩でも行ける。
好きな食べ物はエクレアだ。
皮はへにゃへにゃ派。だれも聞いてないけど。
この本を読んで久しぶりケーキが食べたくて仕方なくて困っている。だれも聞いてないけど。
そして、いかにもストイックに我慢してるっぽく書いたけど、今日はエクレアと水羊羹を食べた。
健康診断はこわい。
いくつかの話の中では「ままならない」が良かった。
子育て中のお母さん達のままならない事が描かれていて、当時の大変さを改めて思い出した。
お母さんたちは大変だ。
ほんの数ヶ月前に母親になったばかりなんだから、会社で言ったら新入社員だよ、に笑った。
たしかに。
この社会の同調圧力は、道場に入りたての弟子をいきなり天下一武闘会に出して、武道家らしく振る舞えと言ってるようなもんかもしんない。
恐ろしいことに、子供を産んだ女性たちこそあの辛さを忘れたのか、それとも恨みに思ってか知らないが、若い母親に母親らしさを強制してしまう。
私はそうはならないぞ、と思ってはいるが、実際に自分の孫が生まれた時に、母親にしかできないことがあるとか、今少しの辛抱とか言っちゃわないとも限らない。
なんだろう。遺伝子に載ってんのかな?
母になったとき自分の母に言われた事をいまだに許せてなくて、自分でもいかがなものかと思う。
まあここら辺が私の人間としての度量の限界かもな。
ショートケーキは祈りのかたち――。
悩んだり立ち止まったり、鬱屈を抱えたりする日常に、
ひとすじの光を見せてくれる甘いもの。
「ホール」
大学生の<ゆか>と<こいちゃん>はどちらも、母との二人家族。父が出て行ってから買えなくなったホールケーキを求めて、ふたりは<失われたホールケーキの会>を結成。ある時、離れて暮らす父親から、「大事な話がある」とそれぞれに連絡があり……。「ショートケーキ。」
俺が働くケーキ屋では、ホールケーキを予約なしに買ってくれるお客さんを天使と呼ぶ。天使の中には常連もいて、その二人組女子は、丸いホールのケーキにこだわっているようなのだ。ところで甘いものに目がない姉が、最近元気がないのが気になっているが……。「追いイチゴ」
ケーキ屋で働く私には、嬉しいことがあったときにひとりで行う「趣味」がある。ケーキを冒涜しているようで人には言えないのだが……。「ままならない」
ママになった瞬間から、さまざまなことがままならなくなった。大好きなショートケーキをもう一度ひとりでゆっくりと味わいたい。その願望を実現すべく、<あつこ>は二人のママ友と互助会を結成する……。「騎士と狩人」
<央介>の口癖は「嫁に行きてえ」、何事にも受け身で生きてきた28歳の会社員だ。ある時、領収書の不備を指摘されたのをきっかけに、会社の経理担当の女性のことが気になり始めるが……。
ショートケーキをめぐる、優しく温かな5編の物語。 文庫解説:岡野大嗣(歌人)
次に読みたい本
もはや、ドラックなんだろうな。
確かに、生きるのに必要というよりは精神安定のために食べてる節はある。