五条 紀夫 の「私はチクワに殺されます」を読んだ。
「前代未聞のチクワサスペンス」と銘打たれたこの物語は、序盤こそ荒唐無稽なホラー(というよりホラ話)かと思いきや中盤でミステリ要素が加わり、最後には再びホラーに戻るという不思議な構成の作品だった。
タイトルからふざけた内容を想像していたが、ノンフィクションライター岡島が登場すると物語は一気に謎解きモードへ。
犯人が名指しされたところで終わりかと思いきや、まさかの展開でホラーへと戻っていく。
「チクワに殺される」というタイトルの割には意外とまともな内容。
もっとコミカルなミステリー路線でも面白かったかもしれないが、シリアスな展開には良い意味で裏切られた気分だ。
一応、ミステリの棚に置いてあるようなので、ネタバレには気をつけたい。
(ドラマホットスポット、面白かった。棚が違う!)
第一の手記と第二の手記の間で展開される謎解きでは、岡島の「僕はボーイスカウトに入っていたので、話を煙に巻くのもロープを巻くのもうまい」というセリフに思わず笑ってしまった。
真犯人と対峙する岡島は、決して良い探偵ではない。
むしろ、自分の小説のためならプライバシーを無視するいやなヤロウだ。
しかし、言葉選びのセンスが面白い。このまま岡島を探偵役として終わっても良かったのに、作者のサービス精神はさらに予想外の展開で、被害者になってしまう。
最終的にはチクワの神による大量殺人が行われるという驚愕の結末に。
「ネタバレどころか何が起こっているのか?」と感じる方もいるかもしれない。
確かに、チクワの神様が一人勝ちする小説など、世界中探してもなさそうだ。
個人的には最後のホラー展開を取っ払い、チクワ本格ミステリにしてもらっても良かったと思うが、チクワという題材で勝負した時点でこの作品はオンリーワンだ。
ちなみに、チクワを穴を塞ぐために(話すと長いが色々あるのよ)きゅうりやチーズやカレー味のポテサラを持参して、店のチクワの穴をすべて塞いで行く犯罪行為、流石に吹いた。
カレー味のポテサラ、週末やってみよう。
チクワの穴を通して人の姿を見ると、その人物の死に様が見える――。巷に溢れるチクワの秘めたる怖ろしい力に気付いたトラック運転手の男は、己だけが知る事実の重さに苛まれ、やがて身を滅ぼしていく。荒唐無稽な設定から始まる奇妙な物語は、複数の視点から語られることで全く異なる側面を見せる。予想不可能な結末が待ち受ける、前代未聞・驚天動地のチクワ・サスペンスここに開幕!
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