辻堂ゆめの「ダブルマザー」を読んだ。
初読みの作家さんだが、恐ろしげな表紙にビビってしばらく手をつけられないでいた。
怖いけど最後は良い話だった、、、とみせかけてやっぱり怖い話だった。
あ、でも決してホラーではない。怨念や怪異などは出てこない。
純粋に人間が取りうる行動の恐ろしさにヒィーだ。
親1人子1人と言うのは、よく聞くが最初の章は「子1人親2人」だ。
そう考えると、タイトルの「ダブルマザー」もシングルマザーの対義語としての意味があるのだろう。
物語は娘が飛び込み自殺を図ったところから始まる。
なぜ娘は自ら死を選んだのか、悲しみに暮れる温子のもとに、さらなる難題が突きつけられる。
娘が持っていた他人の携帯。その携帯の持ち主に電話をするとやってきた女は、死んだ娘の遺影を見て「私の娘だ」と言い出す。
最初は互いを攻撃し合う2人だったが、次第に共闘関係になっていく。
この話の味噌は、「そんなバカな!」というこの状況を考えだしたところに尽きる。
ミステリーのトリックとしてまだそんな方法があったのか、という驚きを感じさせてくれた。
もちろんこれ以上はネタバレになるので言えない。なぜならこの話だけはトリックを知らずに読まない8割損するタイプの本だからだ。
それにしても若い2人は親に厳しい。(自分が親目線になっちゃってるからか、どうしてもね)そんなに親と縁を切りたいものか、悲しいなぁ。
トリックがすべて、みたいな言い方をしたがこの小説でもう一つあげるとしたら、「ポリアモリー」と言う概念。
めちゃくちゃざっくりいうとポリアモリーとは「すべての相手の合意の上で、オープンに複数の人と同時に親密な関係を築く恋愛スタイル」とのことで、浮気ではないのだ。
娘を亡くした片方の母親、温子は「ポリアモリー」として複数のパートナーとシェアハウスで暮らしているのだ。
ポリアモリーなんてかっこいい言葉を使うと、セクシャルマイノリティーへの攻撃はよくないので誰も何も言えなくなるが、温子のそれは「何も決められなかったことの代償」のように感じられる。
この人と結婚する、という決断をしなかったがゆえに全員と付き合い続けていってるのでは?
誰も選ばないまま、たくさんのお父さんとともに自分の娘を育てると言う、いびつな関係を作ってしまった彼女が、55歳の垢抜けないパート女性として描かれているところももまた面白い。
本人同士が納得して幸せなら、横からご意見を申し上げる必要は全くないのだが、娘からしたら嫌だったろ。
でも、このゾワッとする感じ、高校生の時に読んだ筒井康隆の「レモンのような二人」を思い出した。
今考えると田舎の高校生には毒気が強すぎたよなー
強烈過ぎて忘れられない。
飛び込み自殺を図り、死亡したひとりの女性。
なぜか、母親を名乗る女性が二人現れて。
二人の母親が、娘の死の真相に迫る衝撃のミステリー!
うだるような真夏日、ひとりの女性が駅のホームに飛び込んだ。そこに、なぜか母親を名乗る二人の女性が現れる。
性格も家庭環境も全く異なる二人の共通点はただひとつ。娘のことを何も知らない。
死んだのは自分の娘なのか。なぜ、死んだのか。違うなら自分の娘はどこにいるのか。二人の母親は、娘たちの軌跡を辿り始める。
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